本州3社(東日本、東海、西日本)は2006年までにいずれも株式を上場し、完全民営化した。09年以降、インバウンド収入の増加や新幹線事業の好調を受けて収益を伸ばしてきた。18年3月期の純利益はJR東海が3955億円、JR東日本が2889億円、JR西日本が1104億円となった。
一方、3島会社は分割以降、計1.3兆円に上る経営安定資金から生み出される運用益で損失を補塡してきた。このなかでJR九州は、博多駅ビルなど不動産事業に注力。16年に東証1部に上場を果たした。18年3月期の純利益は504億円。JR九州は3島会社の成功モデルとされる。JR九州は、鉄道事業は赤字だったが、不動産事業で赤字経営から脱出した。
12年3月期以降、JR北海道は計4000億円、JR四国は計2000億円の追加支援を受け、最終黒字化を図る綱渡りの経営が続いてきた。
JR四国の18年3月期の純利益は前年より9割少ない3億円。鉄道など運輸事業の赤字は119億円に上る。分譲マンションの販売利益や経営安定基金2082億円の運用益135億円で運輸事業の赤字を補塡し、最終損益段階で黒字にするヤリクリ決算だった。
北海道新幹線の営業赤字100億円
国鉄民営化のデメリットの象徴がJR北海道だ。いまだ赤字経営から抜け出せないでいる。
JR北海道の18年3月期の営業収入は1737億円で前期より12億円増えた。このうち鉄道収入は前期比横ばいの728億円。新幹線収入は79億円で23億円減った。新幹線の営業赤字は100億円と、前期(54億円の赤字)に比べ2倍近くになった。開業効果が一巡し、利用者数が落ち込んだうえ、設備の修繕費がかさんだ。
北海道新幹線の線路をJR貨物と共有していることもコスト高の一因となっている。JR貨物が支払った線路使用料が20億円だったのに対し、貨物列車が走行する線路の修繕費は200億円規模に上った。
JR北海道の連結営業損益は416億円の赤字(前期は398億円の赤字)。経営安定基金(7615億円)の運用益は255億円あったが黒字転換できなかった。最終損益は87億円の赤字(前期は148億円の赤字)で、2期連続の赤字となった。
民営化の際、JR北海道は多数の赤字路線を抱え、赤字になることはわかっていた。国から経営安定基金を受け取り、その運用益(500億円)で鉄道事業の赤字を補うスキームが編み出された。しかし、超低金利によって、運用益は255億円と87年度実績の半分にしかならない。鉄道事業の赤字を基金の運用益で補う収益モデルが成り立たなくなった。
人口減の直撃を受け、JR北海道は存亡の危機に立たされている。北海道新幹線の札幌延伸を再生の起爆剤として期待をかける。しかし、新幹線全線開通ははるか先だ。北海道新幹線が札幌まで延びれば一息つけるという考えは甘い。東京-札幌間の新幹線の高速化を進めても、飛行機の利用者が新幹線に乗り換えるケースは限られる。
いったん国有化して、元に戻すしか手はなさそうだが、それには北海道を含め、納税者である国民全体の理解が不可欠となる。
(文=編集部)