ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 40人でも世界トップシェアの企業  > 2ページ目
NEW
片山修「ずだぶくろ経営論」

徹底した技術者優遇と海外展開…40人でも世界トップシェア、あの中小企業の秘密

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
【この記事のキーワード】, , ,

 もう一つの用途は、製品の品質評価だ。例えば、半導体の電気抵抗は、用途によって求められる値が異なる。その半導体に求められる値かどうかを測定する品質検査や、購入した製品の受け入れ検査などにも用いられる。

 その代表的な製品の一つが、タッチパネル用フィルム導電膜のシート抵抗測定装置だ。スマートフォンやタブレットの画面には、タッチパネル用のフィルムが貼られている。そのフィルムの抵抗率を、生産工程においてインラインで、ラインを止めることなく測定する装置だ。

 この製品については、競合といえる会社はドイツの一社に限られる。性能的にはナプソン製のほうが優れるため、タッチパネル用のフィルム導電膜の測定器市場は、ほぼナプソンの独壇場だ。ちなみに、これら測定器の価格は80万円ほどの小型のものから、高価なものでは5000万円を超える。ボリュームゾーンは数百万円だ。

徹底した技術者優遇

 ナプソンは1984年、前社長の結城忠信氏ら3人によって創業された。

「創業した頃は“ジャパン・アズ・ナンバーワン”といわれた時代で、日本の半導体メーカーは世界シェア1位から6位までを独占するなど、世界のトップを走っていました。わが社は、その流れにそって歩んできました」(中村氏)

 ところがその後、状況は一変し、半導体不況を迎える。1990年、91年と、需要が落ち込んで苦しい時代を迎えた。一時、受注残高500万円というレベルまで追い詰められた。中村氏自身、「もうもたないかもしれない……」と覚悟した。
 
 しかし93年ごろから国内の液晶市場が勢いづいて忙しくなった。

「その後、ずっと忙しかったですよ。08年のリーマンショックのときは、さすがに大変でしたけど、それでも黒字でした」(中村氏)

 半導体産業は、もともと「シリコンサイクル」という言葉で知られるとおり、市況に大きな波がある。そうなると、測定器など関連企業は、ひとたまりもない。大波に翻弄され、ときに泳ぎ切ることができずに淘汰されるケースが少なくない。

 ナプソンは「シリコンサイクル」に翻弄されながらも、生き延びることができたのは、なぜか。技術者を優遇し、育成を怠らなかったからである。企業の規模にかかわらず、企業の競争力は、つまるところ人材である。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

徹底した技術者優遇と海外展開…40人でも世界トップシェア、あの中小企業の秘密のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!