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【ケフィア破産】年利20%…なぜ3万人超の人が「投資詐欺」に引っかかったのか?

文=長井雄一朗/ライター
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【ケフィア破産】年利20%…なぜ3万人超の人が「投資詐欺」に引っかかったのか?の画像1「gettyimages」より

 9月3日、ケフィア事業振興会(以下、ケフィア)と関連会社3社は東京地方裁判所から破産開始決定を受けた。負債総額は4社合計で3万3747人に対して1053億3706万円(うち、ケフィアが債権者3万575人、負債総額1001億9462万円)という規模だ。

 ケフィアは、柿やヨーグルト、ジュースなどの食品を中心とした通信販売「ケフィアカルチャー」を運営しており、会員は公称220万人。通販事業以外にも、ダイレクトメールで買戻付売買契約を行う「オーナー制度」や、金銭消費貸借契約の「サポーター募集」により資金を集めていた。

 一方で、昨年11月頃から会員へ配当や元本の支払いが遅れており、ケフィア側は「システムの入れ替えに伴うもの」と説明していたものの、その後も支払遅延が解消しないことから、会員との間で訴訟や仮差押などのトラブルが勃発していた。なかには1億円を費やしたり家族で会員になったりしたケースもあり、被害者は3万人以上に及ぶ可能性もあるという。

 追跡取材を行っている東京商工リサーチは「これから満期を迎える『オーナー制度』に加え、ケフィアに金銭を貸し付ける『サポーター募集』でも会員から多額の資金を集めており、被害額は1000億円に達する可能性もある」としている。

 今年7月にはケフィアグループ被害対策弁護団が結成されており、9月2日には弁護団が被害者向けの説明会を2回開催し、いずれも300人以上が参加した。弁護団長の紀藤正樹弁護士は「この事件で自分が出したお金が全額戻ってくることはほとんどない。ケフィアは資産隠しや海外に資産を移転している可能性がある」と語っている。

 被害者の多くは高齢者とされているが、その実態はどのようなものか。

荒稼ぎしていたケフィアのビジネスモデル

 ケフィアは、1992年にケフィアヨーグルトの種菌の販売を目的に創業された。その後、かぶちゃん農園などのグループ農園から農水産加工品を仕入れ、会員制通販サイト「ケフィアカルチャー」で販売を始めた。

 前述した「オーナー制度」は、干し柿やジュースなど加工食品の「オーナー」を募り、数カ月後に契約時に支払った金額の10%程度の利息をつけて買い戻すという仕組みだ。会員は1口5万円で売買契約を結んでいた。また、「サポーター募集」はケフィアと会員が金銭消費貸借契約を結ぶものだ。

 東京商工リサーチによると、2013年7月期の売上高は約65億5000万円だったが、17年7月期には売上高が15倍増の約1004億円、利益は約1億5011万円に急成長している。

 東京商工リサーチの取材に対して、ケフィア側は「通販事業は約100億円、残り900億円がオーナー制度やグループからの経営指導料」と回答している。

「柿の木のオーナー制度が当たったことで、同事業に目をつけたケフィアは、その後も募集を拡大した。最初はそこまで金利が高くなく、徐々にオーナー制度を拡大していった」(東京商工リサーチ)

 今回、大きな問題となっているのが、その「オーナー制度」だ。一口5万円で、半年後に10%の利息をつけて返金される上、実際に柿も送付されていた。会員向けのダイレクトメールでは、年利20%を超える案内まで行われていたという。

 しかし、このご時世で半年で10%というのは破格の利回りだ。なぜ、信用してしまったのだろうか。元オーナーたちは、東京商工リサーチの取材に対して以下のように答えている。

「いい金利だからずっと続けてしまった。柿なども送ってくれたので、それが楽しみでした。エンターテインメントのイベントや歌舞伎にも無料で招待してくれたので、はまってしまいました」

「昨年末に満期を迎えた元本と配当が振り込まれていない」

 たとえば、一口5万円で契約し、それが5万5000円になって戻ってくる。会員は、そのお金をまた投資に回し、10万円や20万円に増やしていく……。それがうまく回っていればウィン・ウィンだが、前述のように昨年11月頃からケフィアの支払いが滞り始めた。

 ちなみに、ケフィアは関連会社のかぶちゃんメガソーラーでエネルギー事業も手がけていた。ケフィアの元関係者は東京商工リサーチの取材に対して、このように語ったという。

「太陽光発電はうまくいっていたが、地熱発電、バイオマス発電、大学との共同事業、ベトナムなど海外事業も、ほとんどの新規事業が失敗した。会社の誰もが『高配当を支払い続けることはできない』と思っていただろう。支払いが遅れた後も、会員の信頼を回復するために複数の貸し切り公演に会員を招待していた」

 高金利に加えて、公演やイベントに招待することで、会員をつなぎとめていたようだ。

危惧される「第2のケフィア」の誕生

 そもそも、被害が拡大した原因は何か。「国は指導や罰則などの対応を取る必要があったのでは」という声もあるが、それは難しかったようだ。ケフィアの「オーナー制度」や「サポーター募集」は、いわゆる預託商法だが、出資法や金融商品取引法などの網をかいくぐるスキームだったからだ。

 破産寸前の8月31日、消費者庁はケフィアが「債務の履行遅延」を引き起こしているとして注意喚起を行い、「支払いが遅れている契約者数は少なくとも約2万人、金額は約340億円に及ぶ」との見解を示した。

 ケフィア側とすれば、「オーナーとは買い戻し契約を締結している」という言い分がある。たとえば、柿をオーナーが買い取り、時期が来ればケフィアが買い戻し、利子を付けて元金とともに返金する。つまり、一般的な商取引になっているために、どの省庁も指導できなかったのが実情だ。「サポーター募集」においても、ケフィアと会員の関係性は「個人がケフィアにお金を貸し付けただけ」の話になるため、それにストップをかける方法はなかった。

 一方で、ケフィアは6年前に社債を発行していたが中止し、その後に「オーナー制度」や「サポーター募集」を始めたともいわれる。

 3月に破産した、磁気治療器の預託商法などを展開していたジャパンライフは、1年で4回の行政処分を受けていたが、債権者が破産を申し立てるまで事業を続けていた。日本弁護士会は、預託商法の抜本的な法制度の見直しを求め、意見書を公表している。ケフィアやジャパンライフのような資金集め商法を防ぐためには、消費者保護の観点からも新たな規制や法整備が必要だろう。

 もちろん、同じような手法で正当なビジネスを行っている企業もあるが、特に高齢者を巻き込むかたちの投資詐欺まがいの商法は後を絶たない。なんらかの歯止めがなければ、第2のケフィアの誕生も危惧される。
(文=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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