アパレル大手、ワールドの株式上場を東京証券取引所が承認、9月28日に東証1部に再上場した。2005年、MBO(経営陣が参加する買収)に伴い上場廃止しており、13年ぶりの市場復帰となった。
想定する発行価格(3630円)に基づく上場時の時価総額は約1314億円。ワールドは市場から約540億円を調達する計画だ。公開価格は9月18日に正式に決定する。
ワールドは、なぜ再上場するのか。
「MBOの後遺症。端的にいえば、MBOが失敗したからだ」(アナリスト)といった辛口の評価が多い。MBOは、経営陣が株主から自社株式を譲り受けたりして、オーナー経営者として独立する手法をいう。
ワールドのMBOを振り返ってみよう。2005年、企業買収の防衛策として、ワールドの寺井秀蔵社長(現会長)ら経営陣はMBOを実施したが、その際、複雑な手法を採った。
第1段階は、寺井氏個人が100%出資するハーバーホールディングスベータ(以下、ベータ社)が、ハーバーホールディングスアルファ(以下、アルファ社)に100%出資した。2社と旧ワールドの資本関係はない。
第2段階は、アルファ社がTOB(株式公開買い付け)により、旧ワールドの株主から株式を取得、アルファ社は旧ワールドに94%出資する親会社となった。その後残り6%の旧ワールドの株主に対して株式交換を実施し、旧ワールドはアルファ社の完全子会社になった。
第3段階は06年4月1日、アルファ社が存続会社、旧ワールドが消滅会社となる吸収合併を実施。同日、アルファ社は旧社名と同じ株式会社ワールドに商号を変更した。
アルファ社の資本金は10億円しかない。どうやってTOBの資金を捻出したのか。旧ワールドが銀行団に債務保証し、担保を提供。銀行団は2290億円の融資枠を設定し、2300億円の買収が実現した。
だが、そのツケは大きかった。アルファ社が旧ワールドを吸収合併したため、新ワールドはアルファ社の有利子負債を丸々抱え込む破目になった。表向きはMBOといっているが、実のところLBO(レバレッジバイアウト)の変形だ。
LBOとは、買収資金を買収対象企業の資産やキュッシュフローを担保として、金融機関から借り入れて買収すること。資金が少なくても買収できるメリットがあるが、買収された企業は巨額な負債を背負う。買収された企業が、その負債を返済できなければ債務超過になる。買収された企業には極めてリスクの高い手法といわれている。