日本全国にオーケストラが1000以上あると聞くと、皆さん、驚かれるかもしれませんが、本当のことなのです。ベートーヴェンやチャイコフスキーを演奏するのは当然として、地方自治体や企業から援助金をもらい、地域活動まで行っている団体もあります。
そのうち、プロオーケストラは36団体しかないので、ほとんどはアマチュアオーケストラです。この数には一般大学のサークル活動におけるオーケストラは含まれていませんし、小中高のオーケストラ部まで加えれば、日本は世界に類を見ない、飛び抜けた“オーケストラ大国”となります。
僕も、これまで喜んで市民オーケストラや大学オーケストラを指揮してきました。いろいろなレベルの団体があるので一概には言えませんが、それでもプロのオーケストラにとっても難曲であるマーラーやストラヴィンスキーの作品を、立派に演奏するアマチュアオーケストラも少なくありません。
メンバーの多くは、学生時代にオーケストラ部やブラスバンド部に所属していた人たちですが、もちろん、急に楽器に興味を持ち、レッスンに通い、晴れて市民オーケストラに入団した方々もいます。入団してもなお、プロのオーケストラの奏者の下にレッスンに通う方も多いですし、実際にプロの音楽家を目指して音楽大学で勉強した後、地元に帰り、愛する故郷の市民オーケストラの中心的人物として活躍しているといった、半分以上プロのような楽員も多くいます。
プロのオーケストラ奏者との違いは、演奏で稼いで生活するのではないという点ですが、「主業はあれども、どちらが主なのかわからない」、そんな方々ばかりです。あまりにものめり込んでしまって、土曜日はAオーケストラ、日曜日はBオーケストラ、木曜日にもCオーケストラのお手伝いと、家族サービスそっちのけでオーケストラに没頭する方々もいます。そうなってくると、新婚当時は応援してくれていた奥様も、子どもが生まれたりすると、だんだんと良い顔をしなくなってきます。そんな、家族関係まで危うくなってくるほど没頭する方も、ひとつの市民オーケストラに必ず10名程度はいます。