篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」
オーケストラ演奏家たちだけが知っている、中毒になる超絶の興奮と感動
さらに、個人では買えない特殊楽器を購入したりレンタルするのも、大きな出費となります。それでも、プロとは違い、楽員には出演料がかからないので、年間700万円弱の支出で抑えられるといえますが、それにしても少ない額ではありません。もちろん、各個人の楽器購入代金、楽器のメンテナンス、個人レッスン料、交通費等はそれぞれの自己負担です。
これが大学のサークル活動、特に歴史ある大学のオーケストラともなると、大学の援助金だけでなくOBからも援助を受けるので、資金は潤沢です。一流の指揮者やソリストを招き、通常の演奏会はもちろん、ヨーロッパ公演なども行われます。そして、欧米の聴衆は、一般大学のオーケストラのレベルの高さに驚くのです。
どうして、そこまでしてオーケストラで演奏したいのでしょうか。これには、さまざまな理由があると思いますが、突き詰めていくと結局は、指揮者も、プロの音楽家も、アマチュアの音楽家も、学生も同じです。どんなに苦労を重ねても、作曲家たちの素晴らしい作品を演奏することで得られる感動を知ってしまうと、もう次の感動なしにはいられなくなるからだと思います。オーケストラのステージでは、まるでお祭りのクライマックスでの最高潮のような瞬間が何度も訪れます。音楽の特異性として、空気を伝わった音が、その場にいるすべての人々の耳に平等に届くので、聴衆を巻き込んでホール全体が興奮に包まれたときの感動は、忘れることが不可能なのです。
僕には、この感動を文章で表現する力はありません。ぜひ、コンサートにお越しください。
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UPDATE:11:30