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サントリー“まれな”親子逆転上場、真の狙いとは? 飲料業界再編への起爆剤か

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サントリー“まれな”親子逆転上場、真の狙いとは? 飲料業界再編への起爆剤かの画像1サントリーホールディングス本社(「Wikipedia」より/663highland)

 サントリーホールディングス(HD、佐治信忠・会長兼社長)の子会社で清涼飲料大手のサントリー食品インターナショナル(鳥井信宏社長)が7月3日、東京証券取引所第1部に上場した。初値は公開価格を20円上回る3120円。終値は3145円だった。株式時価総額(発行済み株式総数×株価)は9718億円で、今年最大の新規上場(IPO)となった。

 100%の株式を保有していたサントリーHDは約4割を売り出した。株式公開に伴う資金調達額は3900億円。サントリー食品は2000億円を国内外のM&A(企業の合併・買収)に投じる。上場後もサントリーHDが発行済み株式の約6割を保有する親会社であることに変わりはない。

 サントリー食品は缶コーヒー「ボス」や緑茶飲料「伊右衛門」などの人気ブランドを持つ。清涼飲料の国内シェアは22%。首位のコカ・コーラグループ(28%)に次ぐ。海外展開も積極的で、シンガポール、ニュージーランド、豪州などで現地飲料会社を買収。海外事業が全体の売り上げの3割、セグメント利益で過半を稼ぎ出している。

 2013年12月期の売上高は前年比13.9%増の1兆1300億円と、初めて1兆円の大台に乗せる見込みだ。営業利益は同28.3%増の750億円、純利益は同49.7%増の350億円、1株当たり利益133.2円を予想している。1株当たりの配当金は未定だが、12年同期は59.7円の配当を実施した。

 サントリーといえばビールや洋酒のイメージが強いが、主力は飲料・食品である。サントリーHDの12年12月期の連結売上高は1兆8516億円。このうち飲料・加工食品部門が9844億円で53%を占める。高級ビール「ザ・プレミアム・モルツ」が看板商品のビールやウイスキーの酒類部門は5521億円で全体の30%。ワインや健康食品、外食などが同17%の3151億円だ。飲料・加工食品部門のセグメント営業利益は767億円で、連結営業利益(1077億円)の71%を占める稼ぎ頭だ。

 サントリーのように「親会社は非上場だが、子会社が上場」しているケースは東証全体のわずか1%、24社だ。しかも大半は時価総額が100億円未満で、サントリーのような大企業は極めてまれだ。

 04年に西武グループ創業家の資産管理会社で非上場のコクドが、上場していた子会社・西武鉄道の保有株数を過少申告していた証券取引法違反事件が発覚した。親会社は非上場で子会社を上場するケースの評判は決してよくない。

●影落とすキリンとの経営統合の破談

 「なぜ、上場するのはサントリーHDではなく、子会社のサントリー食品なのか?」

 株式市場の関係者の間でこんな声が上がったが、背景には創業家のお家の事情が絡んでいた。サントリーは1899(明治32)年、鳥井信治郎氏がぶどう酒の製造販売を目的に「鳥井商店」を開設したのが始まり。創業家による同族経営を貫いてきた。本家である鳥井家と分家の佐治家の資産管理会社「寿不動産」(大阪市)がサントリーHDの89.3%の株式を保有している。

 サントリーHDの佐治信忠社長は、2009年にキリンホールディングスとの経営統合に動いた。両社には少子高齢化で国内市場が頭打ちになるなか、世界を目指すという共通の目的があった。だが10年2月に交渉は決裂した。対立点は、統合後の寿不動産の位置付けにあった。佐治社長は創業家が一定の影響力を残すため、寿不動産が統合後の新会社に3分の1超出資することを主張した。これをキリンが拒否した。

 サントリーは海外に活路を求めた。09年には仏飲料メーカー、オランジーナ・シュウェップスを3000億円で、ニュージーランドの清涼飲料大手、フルコアを750億円で相次ぎ買収した。

 その結果、実質有利子負債は08年12月期末の1048億円から、12年同期末には3687億円と3.5倍に膨れ上がった。従来の銀行借り入れや社債の発行では、世界的なM&Aに対処できない。株式を上場して資金を確保する必要に迫られた。

●創業家の利益と資金調達を両立

 しかし、サントリーHDが上場会社になれば、必然的に寿不動産の持ち株比率は下がる。やがて、サントリーが創業家の会社でなくなる日がやってくるかもしれない。それだけは避けたい。そこで子会社のサントリー食品を上場させた。

 創業家の将来にわたる利益は守る。かつ、子会社を上場して、株式市場から資金はしっかり調達する。「親子逆転」の上場作戦の狙いは、まさにここにある。

 サントリーというビッグネームが株式を公開した。上場企業としてのガバナンス(企業統治)をどう確保するかが、今後の大きな課題になる。

BusinessJournal編集部

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