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高安雄一「指標でみる韓国経済の今」

知ってるようで知らない、なぜ設備投資は経済指標として重要?なぜ景気動向を先行?

文=高安雄一/大東文化大学教授
知ってるようで知らない、なぜ設備投資は経済指標として重要?なぜ景気動向を先行?の画像1
「Getty Images」より

 今月も先月と同様、重要な需要項目のひとつである設備投資について取り上げる。韓国における設備投資の現状を把握するための指標は設備投資指数であるが、設備投資には数カ月後の設備投資の動きを先行的に把握できる国内機械受注(船舶を除く)がある。日本にも機械受注という指標があるが、ほぼ同じ性格を持つ指標と考えてよい。

 国内機械受注は、「機械受注動向調査」により把握される指標である。「機械受注動向調査」は設備投資の供給側から、受注の段階で把握できる指標である。設備投資については、需要側、すなわち設備投資を行う企業が、設備投資計画を策定し、設備投資を行うことを決定するところから始まる。次に供給側、すなわち、機械設備を供給する機械メーカーが設備投資を受注する(反対から見れば需要側が機械設備を発注する)。そして、供給側が機械設備を製造し、需要側に販売・引き渡しを行い、検収・据え付けを行う。最後に、需要側が設備機械を有形固定資産などとして決算書類に計上する。

 設備投資が行われたとされる時期は、機械設備が販売・引き渡しされ、有形資産などとして決算書類に計上されたときである。機械設備は物にもよるが、受注から販売・引き渡しの間に相当程度のタイムラグがある。これは機械設備を受注してから製造を始め、完成させるまで時間がかかるためであり、平均的には3~4カ月程度である。よって供給側が機械設備を受注する時期は、設備投資が行われる時期より数カ月先行し、機械設備の受注の程度を把握すれば、設備投資が実際に行われるより、数カ月早くその動向を把握することができるわけである。

 韓国ではどのように需要側の機械受注額を把握しているのだろうか。まず機械受注額を調査する母集団は、製造業の一定の業種における、設備用機械を製造している従業員数が10名以上の事業所である。しかし、すべての事業所に対して調査をしているわけではない。韓国では毎年、「鉱業・製造業統計調査」を行っているが、この調査結果をもとに、母集団に該当する事業所を設備用機械の生産額の順に並べていく。そして生産額が大きいほうから実際に調査する標本事業所を選定していく。その合計が母集団全体の生産額の約65%に達するまで事業所の選定を続け、約65%を超えた時点で事業所の選定を打ち切る。標本となった事業所だけに、毎月、どの程度機械受注があったのか機械の種類別に尋ね、結果を集計する。ちなみに、実際に調査対象となる事業所数は毎年変化するが、200~300程度である。

韓国の好調な設備投資

 さて、実際に韓国国内機械受注の動きをみてみよう。国内機械受注は季節調整値が公表されているので前月比を把握することができる。ただし機械受注は、大型受注が入るとその月の数値が跳ね上がってしまうため、平準化するために3カ月移動平均の前月比をみることが望ましい。

 まず国内需要全体をみると(図)、コロナ禍直後の2020年3月には9.0%のマイナスと大幅な減少を記録した。そして7月までは継続してマイナスが続くなど低調な動きとなった。しかし、2020年の8月からはプラスに転じ、9月には9.3%のプラスと大幅な増加となった。その後は2020年11月から2021年1月までマイナスとなった時期はあったが、総じてプラスが続いている。2021年2月には13.6%と2桁の増となり、その前後も高い伸びとなったが、直近3カ月は落ち着いた動きとなっている。つまり、国内需要はコロナ禍後のマイナスからは脱却し、一時期高い伸びを記録したが、最近は少し落ち着いた動きとなっている。

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 国内需要には公共需要も含まれている。そこで自律的な経済の動きで、かつ景気に敏感な製造業の動きを把握するため、民間需要の製造業をみると、おおむね国内需要の動きとパラレルに動いており、最近は落ち着いた動きとなっている。

 国内機械受注は設備投資の動きに数カ月先行する動きを示すため、今後の設備投資は一時期のような大きな伸びは期待できないものの、プラスで推移するのではないかと考えられる。韓国経済は順調に回復しているが、その原動力は好調な設備投資である。今後は少し落ち着くものの、設備投資のプラスは続くと考えられるため、景気も堅調に推移するのではないだろうか。

(文=高安雄一/大東文化大学教授)

高安雄一/大東文化大学教授

高安雄一/大東文化大学教授

大東文化大学経済学部教授。1966年広島県生まれ。1990年一橋大学商学部卒、2010年九州大学経済学府博士後期課程単位修得満期退学。博士(経済学)。1990年経済企画庁(現内閣府)に入庁。調査局、人事院長期在外研究員(ケルン大学)、在大韓民国日本国大使館一等書記官、国民生活局総務課調査室長、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て、2013年より現職。著書に『やってみよう景気判断』『隣の国の真実 韓国・北朝鮮篇』など。
大東文化大学経済学部高安雄一プロフィールページ

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