不動産会社と連携して、高額物件を一般会社員らに買わせる手法が「スルガスキーム」として定着しつつある。スルガ銀行の組織的な不正が明らかになり、日本銀行(黒田東彦総裁)の超低金利政策の“徒花”といえるアパートローン・バブルは、崩壊への道をたどり始めた。「サラリーマン大家(おおや)の終焉」と言い切る有力地銀の頭取もいる。
言うまでもなく、震源地はスルガ銀行だが、東証一部上場のTATERUが、建設資金の借り入れ希望者の預金残高を水増しして、山口県周南市に本店を置く西京銀行に融資を申請していたことが発覚した。
TATERUは改竄の事実を認め、弁護士と社外取締役で構成する特別調査委員会を設置し、改竄の経緯や企業風土について調査する。TATERUの株価は問題が発覚する直前(8月31日)の終値と比べて一時、8割近くも暴落した。年初来安値は9月13日の327円。最安値から70%近く戻したが、年初来高値(4月3日の2549円)の8割安の水準である。
TATERU(当時の社名はインベスターズクラウド)が東証マザーズに上場したのは2015年12月。1年後の16年12月には東証一部にスピード昇格した。今年4月、社名をTATERUに変更。東京・渋谷区の新築ビルに本社を移転したばかり。不動産セクターの利益成長銘柄として個人投資家に人気があり、一部の機関投資家も株を保有していた。
スルガ銀行の不正融資以降、個人投資家は不動産株に対して疑心暗鬼になった。東京株式市場では、“サラリーマン大家”関連銘柄の動向に関心が集まるようになった。「頭金なしでもアパート経営ができる」が謳い文句だったシノケングループにも一時、負の連鎖反応が起きて株価を下げた。
TATERUはインターネット経由で不特定多数から資金を調達して不動産投資に充てるクラウドファンディングの大手でもある。金融庁は不動産投資のクラウドファンディングに関心を示している。