サウジに金があるというのは幻想
サウジで、ポスト・ムハンマドへの移行は、スムーズにいくのだろうか。
「ハリドさんがまずは副皇太子になって、10月末にロンドンから帰国したアハメド王子(77歳)が後見人となり、ムハンマドさんがどこかのタイミングで自然に消えていくというようなことが考えられているのかもしれません。しかし、ムハンマドさんの性格からいったら、そのシナリオに乗らない可能性があります。サルマン国王もいまだにムハンマドさんを擁護しているといわれており、必ずしもスムーズにはいかないでしょう」
ムハンマド皇太子の体制が続く場合、SVFはどうなるのだろうか。
「孫さんは、今回わざわざリヤドまで行って、ムハンマドさんには会ったけど会議には出ずに講演をしなかった。困った時に手を差し伸べてくれるのが、真の友情ではないですか。リヤドまで行ったはいいけど、『ごめん、ちょっといろいろコンプライアンスの問題あってなかなか出られない』ということであれば、『なんだ、お前は?』ということになりますよね。
今回、米ウーバーテクノロジーズのCEOが会議に出席しませんでしたが、同社はSVFから融資を返してくるかもしれません。日本では、まだまだ人権意識は薄いですけど、欧米はものすごく人権問題を重視していますから。『そんな血にまみれた金なんかいらない』ということになって、SWFは今後開店休業になるかもしれません」
今回のFIIでは、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、ムニューシン米財務長官、米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO(最高経営責任者)、米ブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマン会長を初め、米ゴールドマン・サックスの幹部、ドイツ銀行幹部、スイス・ABB幹部が出席を取りやめている。
「今回のFIIで、サウジは560億ドルの案件が成約したと言っていますが、そもそもサウジはお金を持っていません。PIFは、サウジアラムコが上場できないので約110億ドルを国際金融界から借金しているんです。サウジに金があるというのは幻想、ソフトバンクに金があるっていうのも幻想です。孫さんは壮大なビジョンを掲げて世界からお金を調達するのがお上手な方ですから。孫さんとサウジアラビアが組めば最強のコンビだと誰でも思いますが、内情は別という可能性があります」
(文=深笛義也/ライター)
※後編に続く