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日産ゴーン逮捕「国策捜査」説も、公判維持に危惧…西川社長、ゴーン追放に検察を利用か

文=編集部
日産ゴーン逮捕「国策捜査」説も、公判維持に危惧…西川社長、ゴーン追放に検察を利用かの画像1カルロス・ゴーン氏(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 日産自動車カルロス・ゴーン元会長が東京地検特捜部に逮捕されたことに、国策捜査説が出ている。というのも、大々的な報道な割には、無理スジの匂いがするからだ。

 ゴーン氏の逮捕容疑は、2015年3月期までの5年間に100億円弱の報酬を受け取ったにもかかわらず、日産の有価証券報告書には50億円弱と虚偽の記載をしたというもの。その後、未記載は直近3年間を含めて8年間に80億円となった。これについて東京地検は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で立件を視野に捜査を進めている。

 これが脱税なら大きな罪だが、税務申告上の数字ではない。「高い報酬を表沙汰にしたくなかった」というだけの動機なら“強欲”に尽きる。日産のオランダの子会社などがパリ、アムステルダム、ブラジル、レバノンの4カ国で購入した住宅を、ゴーン氏が私的に利用したと報じられている。東京、ニューヨークにもあるという。フリンジ・ベネフィット(企業が給与以外に提供するさまざまな利益)と呼ばれるもので、ワンマン経営者ならよくやっていることだ。

 問題は額の大きさ。姉にコンサルタント料を払い、母親や姉が住む場所まで日産のカネで賄ったことは、会社の私物化にほかならない。海外メディアのなかには、「なぜこんな容疑で会長が逮捕されたのか」「狙い撃ちじゃないか」と捜査を批判する報道も出ている。司法関係者の間では「公判を維持できるのか」と危惧する声が上がっている。

 11月21日付フランス経済紙レゼコーは、ゴーン氏に近いフランス人の間に「日本人の陰謀」という見方があると伝えた。ルモンド紙も「ゴーン氏を追放するための陰謀の薫りがする」とするフランス側の声を紹介した。レゼコー電子版は20日、日産の西川廣人社長について、ゴーン氏の信頼が厚かったにもかかわらず記者会見で容疑者を「失墜させた」と指摘し、古代ローマの将軍カエサルを裏切った「ブルータス」と評した。

現特捜部vs.特捜部OB

 この事件の特異さは、ゴーン氏をめぐる捜査で東京地検が司法取引制度を適用したことにある。2016年5月に成立した刑事司法改革関連法に盛り込まれた司法取引は、今年6月に始まった。捜査に協力する代わりに刑事処分を軽くする制度だ。日産側で協力したのは法務やコンプライアンスを担当する外国人の専務執行役員らを含む複数の幹部。

 ゴーン氏逮捕を陣頭指揮した森本宏特捜部長は法務省刑事局長時代に司法取引制度を導入した中心人物である。特捜部長は花形のポスト。将来の検事総長や事務次官にもなり得る出世コースだ。しかし、森本氏が就任直後に着手したリニア中央新幹線談合事件では鹿島、大成建設の大手ゼネコン2社が全面否認、文部科学省接待汚職事件も賄賂など現金の受け渡しのない接待のみで、政界ルートには届かなかった。世界の自動車業界の大立物であるゴーン氏を逮捕すれば、日仏間の外交問題に発展するのはわかりきったこと。一特捜部長の判断でできるとは考えにくい。「日産がルノーに経営統合されてフランスの企業になることを阻止するための国策捜査」説が流れる所以だ。

BusinessJournal編集部

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