19日、東京地検特捜部は日産自動車のカルロス・ゴーン会長を逮捕した。自身の報酬を有価証券報告書に過少に記載するなど、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いがあるという。具体的には、2011年3月期~15年3月期の各連結会計年度のゴーン氏の報酬額は計約99億9800万円であったにもかかわらず、関東財務局へは計約49億8700万円と記載した有価証券報告書を提出。約50億円も過少に申告していたという。
日産の西川広人・社長兼最高経営責任者(CEO)は同日夜、記者会見を開き、内部通報を受けて社内調査を行った結果を検察に報告し、検察当局と協力して調査を進めてきたと説明しているが、経済記者は語る。
「先月、フランスのマクロン大統領と安倍晋三首相が首脳会談を行いましたが、その場でマクロン大統領が、仏ルノーと日産の経営統合・合併を目指す意向である旨を伝えたのではないかという話があります。現在、ルノーの筆頭株主はフランス政府であり、マクロン大統領は国内の雇用創出のためルノーに対して日産との合併を働きかけるなど、露骨に経営に介入してきました。そんなマクロン氏と鋭く対立してきたのがルノー会長兼CEOのゴーン氏で、マクロン氏にとってゴーン氏は大きな障害でした。そんなゴーン氏を失脚させるために、フランス政府が逮捕劇の裏で糸と引いているのではないかという説が根強いのです。いずれにしても、ゴーン氏が排除されたことで、合併問題が新たな展開を迎えるのは間違いないでしょう」
一方、日産経営陣にとっても、ゴーン氏の退任は決して悪い話ではないという。
「ゴーン氏が日産に乗り込んで来てから約20年間、その強権的な経営によって、多くの役員、社員が日産から追い出されてきました。西川社長をはじめとする現経営陣も、しょせんはゴーン氏の言いなりで、いつ梯子を外されるのか戦々恐々としています。いってみれば、ゴーン氏がいる限り自由に経営はできず、ゴーン氏がいなくなって一番スッキリしているのは、現経営陣でしょう。
また、昨年発覚した無資格者による完成車検査問題の根本的な原因は、本社と現場の意思疎通の悪さですが、現場の社員からは、『本社の役員連中は無理な要求をしてくるばかりで、高い報酬をもらっている』という恨み節が聞こえてきます。本社は現場を無視した指示を繰り返す一方、重要な情報が現場から本社に上がっていません。ライバルのトヨタでは考えられない事態です。そうした社内にたまった不満のガス抜きのためにも、ゴーン氏の失脚はプラスに作用するでしょう」(新聞記者)
高額報酬に執着
ちなみに、ゴーン氏といえば、高額な役員報酬が毎年話題を呼んできた。2017年度を例にとれば、日産会長としての報酬7億3000万円に加え、仏ルノー会長兼CEOとして同9億5000万円、三菱自動車工業会長として同2億2700万円と、合計で約19億円に上る報酬を手にしているが、前出・経済記者は語る。