その理由としては、まずアルバイトに客層キー入力指導が徹底されていない店舗が多いことが挙げられる。要するにバイト君は、この客層キーの入力が面倒なので、最も押しやすい、レジの一番端っこにある50代女性のキーを適当に押してしまうようだ。客層キーの分析を見ると、50代女性の来店が突出しているというデータが残っており、コンビニで働く者の間では、半ば常識化している。
それ以外にも、商品開発のためのデータ分析として、欠陥がある。例えば、客層キーの分析結果を見ると、「仮面ライダーフォーゼ」のおもちゃを30代男性が多く購入していたり、センターインなどの生理用ナプキンの40%を男性が購買していたりする。これは決して、オタクや変わった性的嗜好を持つ人が世の中に多いというわけではない。仮面ライダーフォーゼは、親子連れのお父さんが子供におもちゃを買ってあげたから、生理用ナプキンは、カップルでの買い物で男性が支払いをしたからである。
これは客層キーの入力は、お金を支払うお客だけをカウントするため、実際の購買者と支払い者のギャップが生まれてしまっていたのだ。一般的にコンビニの客層は、男性65% 女性35%と言われているが、世の中に割り勘が増えたとはいえ、実際はカップルでの来店の場合は男性が支払うことが多いので、本来の購買客層でいうと、女性の構成する割合はもう少し多いのではないかとも言われてきた。
だが、客層キーによるデータ取得が不正確であっても、大雑把には世の中の変化を分析したりすることはできる。例えば、コンドーム。96年の女子高生ブームあたりまでは、女性の購買はほとんどゼロに近かったが、今は30 %近くとなっている。90年代後半以降、年々性がフランクになっていったり、エイズなど性病に対する自己防衛意識が高まり、女性単体でもコンドームを購入することが増えたことが分かるわけだ。余談だが店舗別購買分析をみると、出張型性風俗店の近隣店舗やディズニーランド宿泊ホテル近くのコンビニは、コンドーム売上上位店だったりする。
幹線道路沿いにある店舗では、「道先で大型工事がある」「通勤導線になっていて大型マンションなど住宅ができた」「大型誘引施設ができた」などの要因により、個店別の客層が大きく変化するため、客層キーによる分析が重要である。