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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

アマゾンが政治都市ワシントンに本社建設の理由…国家権力と一体化するネット企業

文=加谷珪一/経済評論家
アマゾンが政治都市ワシントンに本社建設の理由…国家権力と一体化するネット企業の画像1「Gettyimages」より

 インターネット企業と政治の関係が、より密接になっている。これまでネットのサービスは社会を便利にするものという位置付けだったが、ネットが社会のインフラとして定着するにつれて、政治との関係を無視できなくなってきた。

アマゾンが選んだのはワシントンD.C.だった

 
 米アマゾンは1年以上にわたって第2本社の建設場所について検討してきたが、最終的にニューヨークと首都ワシントンD.C.郊外の2カ所に決定した。ニューヨークについては、中心部であるマンハッタンからイーストリバーを渡った先にあるロングアイランド・シティーに、ワシントンD.C.については、隣接するヴァージニア州のアーリントンに建設される。

 第2本社が建設される場所には2万5000人の新規雇用が見込めるため、各都市が激しい誘致合戦を繰り広げた。これまで多くの都市の名前が取り沙汰されたが、最終的にアマゾンが選択したのは、ニューヨークとワシントンD.C.という、米国における1丁目1番地であった。

 同社を設立したジェフ・ベゾス氏が創業の地として選んだのは西海岸のシアトルであり、今でも同社はシアトルに本拠を構えている。シアトルは軍港として知られた街であり、ボーイングやマイクロソフトが本社を置くなど、ハイテクシティーとしての側面もある。軍は組織の性質上、人種間の融和を進める必要があったため、民間よりも早くマイノリティの登用が進んだ。このため大規模な軍の施設がある街は、リベラルな雰囲気のところが多く、シアトルはその典型例といってよい。

 自由な雰囲気のシアトルに長く本社を構えていたアマゾンが、東部エスタブリッシュメントが住むニューヨークや、権力の街であるワシントンD.C.に第2本社を建設することについて、違和感を持った人も多いかもしれない。

 各都市はアマゾンに対して高額な補助金を提示していたといわれており、これは、ニューヨークやワシントンD.C.(ヴァージニア)も同じだろう。アマゾンはこれらの条件を考慮した上で決定したものと思われるが、おそらく最大の理由は補助金ではないと考えられる。

 アマゾンはすでに米国の政治、経済、社会の基礎インフラとなっており、政治権力と距離を保つことは不可能になっている。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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