「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれている。そのマーケティングの基礎の基礎として、前回はブランドイメージを維持することの難しさについて解説したが、今回はそのイメージが損なわれた場合、企業はどのように対処すればいいかを、立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に聞いた。
【前回記事】
バーバリー、年間42億円分におよぶ自社商品廃棄の「本当の理由」
不祥事対応は初動がすべて
――前回の記事でブランドイメージは時間をかけて地道に構築するしかないのに、悪いイメージは一瞬で広がってしまう、とのお話がありました。では、もしブランドイメージが失墜しかねない事件を起こしてしまったら、企業はどう対応すべきなのでしょうか。
有馬賢治氏(以下、有馬) 昨今はSNSの普及で、マスコミ以外からもバッシングやさまざまな憶測の情報が飛び交い、収拾をつけるのが難しい時代です。さらに、企業は公的側面があるため、説明責任が社会的に求められているという通念が広がっています。ですので、内的論理での言い逃れや、報道を無視するような姿勢は逆効果を招きます。だからこそ、企業は覚悟を決めて問題と対峙する必要があります。
――人気テレビ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)が、他国のお祭りをねつ造して放送した件で、第一報が報じられたとき、日本テレビ側は報道を否定しましたが、続報が出て謝罪しましたね。
有馬 取り繕ってもすぐに裏を調べられてしまうし、内部告発なども社会正義と捉えられているので、シラを切り通せる時代ではありません。本件は、どうせバレるのであれば、最初から真実を説明するべきだったと思います。あとから「やっぱり本当でした」と言っても、嘘つきという印象を与えてしまうだけですからね。
正直に説明することは大前提ですが、企業は可能な限り素早い対応をすべきだと思います。具体的には、内容を整理して適切にプレスリリースをし、代表者が誠意をもって説明をすることが効果的だと思われます。トヨタ自動車は麻薬密輸容疑で元役員が逮捕された際、すぐに豊田章男社長が記者会見するなど、迅速に対応したため比較的早めに事態を収束できました。これは、初動のスピードが良い結果を生んだ好例だと思われます。