逮捕劇は茶番か
12月1日、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、追加関税の発動猶予を決め、90日で知的財産権の解決策などをまとめると合意した。
その同日、舌の根も乾かぬうちに、中国通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が、米国の要請によりカナダのバンクーバーで逮捕された。孟氏の容疑はイラン向け違法輸出で、米国はカナダに孟氏の身柄の引き渡しを要求している(本稿を執筆後、孟氏は12月11日に保釈された)。
この孟氏の逮捕については、米中協議に出席していた米ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「事前に知っていた」と述べている(7日付日本経済新聞)。ならば当然、トランプ大統領も認識したうえで1日の米中協議に臨んでいたと思われるが、米中協議が茶番劇のように思えてならない。
その上、トランプ大統領は6日に自身のツイッターで「中国は『双方は円滑に連絡し合って協力している』と発表した。その通りだ!」などと言っているが、実に白々しい。そんなことは、もはやありえない。さらに、ナバロ大統領補佐官もテレビ番組で「ファーウェイは世界的に問題だ」と言い放ち、クドロー国家経済会議委員長は「米中協議とは別の問題」などと言っているが、この言葉を額面通り受け取る人はいないだろう。
孟氏の逮捕はさまざまな方面に波紋を投げかけているが、本稿で筆者は、まずファーウェイの実力を確認する。その上で、本事件による日本企業への影響を推測する。その影響は、非常に広範囲に及び、極めて甚大であると考えられる。
ファーウェイの実力
ファーウェイの主な製品は、通信機器、スマートフォン(スマホ)、クラウドサービスで、2017年の売上高は約10兆円、営業利益は約8200億円だった。
特筆すべきは、18年第2四半期に、スマホの出荷台数で米アップルを抜いて、韓国サムスン電子に次ぐ世界第2位になったことである(図1)。
世界1位のサムスン電子は、14年第1四半期以降、出荷台数が横ばいである。また、アップルはクリスマス商戦がある毎年第4四半期だけ特徴的に売上高が高い。ところが、ファーウェイは上記2社と違って、13年以降、右肩上がりに出荷台数を増大させ、その勢いはとどまる気配がない。したがって、この調子で出荷台数を増大させていくと、20年頃にはサムスン電子を抜いて世界1位になっても不思議はない。