10日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が再逮捕され、東京地裁は同日、ゴーン氏に10日間の勾留を認める決定をした。今回の再逮捕の容疑は「直近3年分の有価証券報告書の虚偽記載」だが、先月19日に逮捕された際の容疑は「2011年3月期~15年3月期の有価証券報告書の虚偽記載」であり、逮捕事実は同じで期間だけが異なる点について、身柄拘束の適法性を疑問視する指摘も出ている。
さらには、「役員の報酬」についての虚偽記載が、金融商品取引法が定める「重大事項の虚偽記載」に該当するのかは微妙であり、検察がゴーン氏を有罪に持ち込めない可能性も指摘されている。
また、ゴーン氏の不正を暴いた側である日産の西川廣人社長が、ゴーン氏の退任後に報酬を払う旨を定めた文書に署名していたことが判明し、西川社長の責任を問う声も出ている。そもそも西川社長は2017年からCEOを務めており、会社として虚偽の有価証券報告書を提出していた最終責任は西川社長にあり、西川社長が逮捕される可能性も指摘され始めている。「ゴーン氏を追い出したはずの西川氏は、これから追い込まれる立場になる可能性もある」と指摘するのは、ジャーナリストの河村靖史氏だ。
「検察は日産を法人としても金融商品取引法違反の罪で起訴しており、社長兼CEOである西川氏の責任は逃れられないでしょう。現在、日産関係者にとっては、日産との経営統合と会長ポストへの人材送り込みを狙うルノーという“共通の敵”がいるため、日産側は一丸となっているかのようにみえます。しかし、実際には経営陣も一枚岩ではなく、たとえば日産プロパーの取締役は現在3人(社外取締役を除く)のみですが、そのうちの西川氏と志賀俊之元副会長が“犬猿の仲”なのは業界では有名な話です。ゴーン氏逮捕後に開かれた先月22日の取締役会で、当初は西川氏の会長兼務が採決される予定だったところ、ルノー出身の取締役だけでなく志賀氏も難色を示したため、見送りになったという情報もあります。
こうしたなかで、日産とルノーとのアライアンス問題がひとまず落ち着けば、経営陣の対立が表面化し、日産社内で西川氏を引きずり下ろす動きが一気に高まる可能性は十分にあります。そもそも西川氏は、社内や取引先の間では“無愛想で冷徹”と評判が悪く、西川氏を嫌っている人はとても多い。人望が厚い志賀氏とは真逆です。それを知った上でゴーン氏は、社内からの批判の矛先が自分に向かないように、嫌われ者の西川氏を社長に据えたと見ている日産関係者も多いくらいです。そのため、西川氏への退陣圧力が強まれば、味方の少ない西川氏はかなり不利でしょう」