日常生活に欠かせないスマートフォン(スマホ)だが、端末が高性能になるにしたがって費用の負担も年々増えてきた。「できるだけ、スマホにかかる出費を抑えたい」というのは、多くの利用者の切実な気持ちだろう。
そのため、近年はSIMフリーの格安スマホを利用する人が増加している。なかでもダントツの人気なのが、「HUAWEI(ファーウェイ)」の製品だ。ファーウェイは中国・深センを本拠地とし、世界の販売台数シェアでも、サムスン電子、アップルに次ぐ第3位のスマホメーカーだ。
なぜ今、ファーウェイのスマホが日本でヒットしているのか。ケータイジャーナリストの石野純也氏に話を聞いた。
なぜSIMフリーでシェア4割の人気?
NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手キャリアは、他社のSIMカードを挿しても使えないように利用を制限している。これをSIMロックという。
それに対して、SIMフリーの場合は国内キャリアや格安SIMはもちろん、海外のSIMまで利用できる。通信方式と対応バンドが合えば、端末とキャリアを自由に組み合わせて使うことができるのだ。
「国内のスマホ市場は、まだ9対1の割合で大手キャリアが強い状況にあります。しかし、最近は格安スマホブームに伴ってSIMフリースマホのニーズが増えている。この9対1の『1』のなかで圧倒的な人気を誇っているのが、ファーウェイです」(石野氏)
大手キャリアのSIMロックスマホだけを見ると、やはりiPhoneの人気が圧倒的だが、SIMフリースマホではファーウェイが約4割のシェアを誇るという。
「SIMフリーのiPhoneもありますが、ほかの機種に比べて高額で端末代が割安になる購入補助もないため、需要はあまり伸びていません。そこで、必然的にファーウェイなどの安価なスマホに人気が偏っているのです」(同)
他社にできない独自の戦略とは
ファーウェイの認知度が高まったのは、今から2~3年前だ。ドイツの有名カメラブランド「ライカ」と共同開発したデュアルレンズを搭載する機種「HUAWEI P9」が注目されたのがきっかけだという。
スマホのスペックのなかでも、特に重視されるのがカメラだ。ライカはカメラ愛好者の憧れのブランドで、熱烈なファンも多い。そのライカと開発したデュアルレンズを持つスマホの投入は「ファーウェイにとってターニングポイントになった」と石野氏は言う。
「それまでのファーウェイは、『安いけど、今ひとつパンチがない』というのが弱点でした。そこに、高い知名度と多くのファンを持つライカと共同開発したカメラを搭載したことで、知名度が飛躍的にアップしたのです」(同)
さらに、ファーウェイは販売戦略にも他社にはない特徴がある。それは廉価版モデルの販売だ。石野氏によると、この廉価版こそがSIMフリー市場でファーウェイがシェアを拡大させている大きな要因だという。
「今、ファーウェイは4つのシリーズを展開していますが、そのうち3シリーズで廉価版の端末を販売しています。たとえば、『HUAWEI P10』シリーズは人気の機種ですが、約8万円とそれなりの価格です。『P10』はほしいけど、そこまで高い端末は買えない。そんな人に向けたのが『P10 lite』という機種です。上位モデルの『P10』に比べて性能は劣りますが、そのコストパフォーマンスの高さからユーザーの人気が非常に高い廉価版モデルです」(同)