「P10 lite」の価格は2万円前後という安さ。この価格で日常使いに不自由しない性能を備えているのなら、人気になるのも当然だ。
「つまり、高性能の高級ラインとコスパのいい廉価版ラインの二段構えによる、幅広い層をターゲットにした販売戦略です。これは、『自社のブランディングが最重要』と位置付けるアップルにはできない。世界中に幅広い顧客を持ち、大量生産が可能なファーウェイだからこそ可能な戦略ともいえるでしょう」(同)
絶好調なのに米国進出が厳しい理由
ただし、世界のスマホ市場で第3位のシェアを持ち、日本での人気が高まるファーウェイも、アメリカではほとんど流通していないという。石野氏は、その理由を「アメリカの中国製品バッシングのせい」と推測する。
「つい最近も、アメリカの最大手キャリアのAT&Tからファーウェイの端末を販売する計画が直前になって破談になりました。さまざまな軋轢により、ファーウェイのアメリカ進出が滞っている状況です」(同)
また、アグレッシブすぎる社風が仇となるケースも多発している。
「ファーウェイは、他社が発売した人気シリーズを積極的にキャッチアップし、類似製品をつくって競わせるという戦略を得意とします。たとえば、サムスンの『Galaxy Note』がヒットすると、『Mate』シリーズを立ち上げてぶつけています。中国で『Oppo』と『Vivo』という若者向けスマホが人気になったときも、やはり『nova』という若者向けシリーズをリリースしました」(同)
その結果、「P」「Mate」「nova」「honor」という4つものシリーズが乱立することになってしまった。これは選択肢が広がると同時に、ユーザーを混乱させることにもつながる。とはいえ、「今後は『nova』『honor』が淘汰され、『P』『Mate』の2シリーズが残るのでは」と石野氏は予想する。
そうなれば、日本でのファーウェイ人気もますます高まるかもしれない。
「ファーウェイに限らず、SIMフリースマホは今、大手キャリアのスマホと遜色ないレベルにまで進化しています。大手キャリアにこだわらず、自分の好みに合った特性を持つ機種を検討する。それが、これからのスマホ選びのポイントではないでしょうか」(同)
SIMフリーの格安スマホに乗り換えれば、浮いた費用をほかの消費活動に使うことも可能だ。選択肢の幅を広げることで、より便利で楽しいスマホライフを送ることができるに違いない。
(文=中村未来/清談社)