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からあげ棒もファミチキも店頭から消える?クリスマス、チキンが手に入らない?

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
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クリスマスチキン
「Getty Images」より

 新型コロナ禍の緊急事態宣言を脱し、街は賑わいを取り戻した。クリスマスを前に街はイルミネーションに彩られ、いやがおうでも気持ちが昂る。クリスマスには家族でケーキとローストチキンを取り囲む団欒を楽しみにしている人は多いのではないだろうか。

 だが、最近ネット上では「ファミチキが店頭から消える」というニュースが大きな話題となっている。ファミリーマートの店頭をのぞいてみると、ファミチキが品薄となり「お客様各位 ファミチキはただいま品薄となっています」といった張り紙が目につく。ファミマの店員だという人物のツイッターでも次のような書き込みがみられる。

「(ファミマ店員が皆様の脳内に直接お伝えいたします。新型コロナの影響で、タイの工場の稼働率が大幅に落ちているため、当面の間、ファミチキが相当な品薄になります。店舗辺りの1週間の割当が120個のため、1日辺りの作成可能数が17個程度になる見込みです。ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください)」

 ファミマも「ファミチキの原料がタイ産であり、不足している」ことは事実だと認めているが、これは何もファミマだけではない。セブン-イレブンでも一部地域で「からあげ棒」の供給が休止している。

 味の素冷凍食品では「ザ★から揚げ」「塩麹レモンから揚げ」「若鶏の備長炭焼き」などを家庭用冷凍食品5品、業務用40品を値上げする。家庭用は2022年2月1日納品分から約6~10%、業務用は3月1日納品分から約6~8%値上げするという。

「うちは7、8月にタイの原材料の仕入れ工場でコロナが広がり、それが生産工場に飛び火して安定生産できなくなりました。なんとか生産が安定したので原材料価格の上昇を反映して値段を引き上げました」(味の素冷凍食品広報担当者)

 一方でローソン、ケンタッキーフライドチキンなどは、国産のチキンを使っているために大きな影響はないという。

 2020年度でみると、鶏肉は国内消費(251万トン)のうち34%を輸入鶏肉で賄っているが、輸入鶏肉の生肉(55万トン)では70%がブラジル産、25%がタイ産、すでに加工されている鶏肉調製品(46万トン)はそのほとんどがタイから輸入されている。ところがタイでは多くの生産施設が稼働できなくなっている。

「今年5月頃から7月にかけて新型コロナウイルスの感染者が増加し、複数の食鳥処理場でクラスターが発生し、1カ月から2カ月程度操業が停止してしまいました。その影響で10月ごろから輸入量が大幅に減ってきているのです」(農林水産省関係者)

 新型コロナの感染者は8月に入り減少傾向に入っているが、輸出用の加工鶏肉の生産にどれだけの影響が出ているのかは農水省でも把握できないないという。さらに鶏肉の卸売価格も上昇し、むね肉は昨年あたりから上昇を続け2019年には年平均で1kg260円だったものが20年には297円まで上昇。さらに21年4月には1kg314円だったものが、10月には338円にまで上昇しているという。

年明けには需給環境改善の見込み

 チキンは今どのような状況になっているのか。クリスマスには家庭の食卓に上るのか。大手食肉会社の担当者に話を聞いた。

――現状では鶏肉は不足しているのか、これがいつまで続くのか。

担当者 輸入鶏肉の国内在庫は9月末で10万7584トン。月の推定出回り量の約2.2カ月分の水準であり、通常2.7~3カ月分の水準の在庫量があることを考えると低水準であるといえます。9、10月にブラジルからそれぞれ約4万5000トンが日本向けに船積みされているとの情報もあり、年明けには需給環境は改善することが見込まれます。

――鶏肉の価格は上昇しているが、どこまで上昇するのか。

担当者 すでに上昇は止まっております。上記の通り需給環境の改善に伴い、安定した相場になることが見込まれます。

――鶏肉の不足の原因は、タイの鳥処理場で5月から7月にかけてコロナのクラスターが発生し、操業停止に追い込まれたためだといわれているが、どのくらいの処理場が操業停止に追い込まれたのか。7月以降どのくらいの処理場が操業を開始しているのか。供給体制はどうなっているのか。

担当者 パッカー(食肉処理工場)にもよりますが、現状通常の7~8割の稼働レベルまで回復してきている模様です。

――代替輸入はどこから行われているのか。中国や米国か。価格への影響はどうか。

担当者 一部はブラジルからです。

――クリスマスでローストチキンが不足することはないのか。

担当者 小売のお客様もタイ産は入ってこないことを想定して、代替商品を手配しているという話で、現時点で不足するような話は聞いておりません。

 ちなみにセブンはすでに供給体制を整備し、クリスマス用のローストチキンは別途確保が済んでいるという。ファミリーマートも調達先の調整を進めており、12月中旬までには問題なく供給できるようにするという。

(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

松崎隆司/経済ジャーナリスト

松崎隆司/経済ジャーナリスト

1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。

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