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1930年代にニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者を務めていたイタリアの指揮者、トスカニーニは癇癪持ちとして有名でした。リハーサル中であっても、奏者のことが気に入らないと、英語があまり得意ではないこともあり、「アウト」の一言でその奏者をクビにしてしまうほどでした。
しかし、それでは楽員のほうはたまったものではありません。そこで、楽員も自分たちで組合を結成して、指揮者や事務局と闘争することになりました。
その結果、一度オーケストラで職を得れば、定年まで勤められるようになり、予定されたリハーサル時間を超えることなく、安心して仕事をすることができるようになったのは、一般の社会の方々と同じです。
ただ、オーケストラには、一般の会社員の方々のような急な残業がありません。どちらかというと、比較的決められた時間内で仕事をする工場勤務に近いかもしれません。しかし、曲や内容、進行状況によっては、終了時刻までに終わらない場合もあり、それを「オーバータイム」と呼びます。もちろん、手当てが付くので喜ぶ楽員もいますが、その後の予定を立てている楽員も多いので、通常は時間ピッタリに終わらせるのです。
だた、オーケストラでは、本番でもリハーサルでも演奏中はずっと緊張を強いられ続けるので、終了時刻ともなると楽員はみんなクタクタになっています。指揮者から見ても、オーケストラは大変な仕事だと思います。
最後に、遅刻は厳禁とされる楽員たちは、集合時刻よりかなり早くホールに来ることはありますが、演奏会が終わった後に帰るのは、ものすごく早いのです。観客たちが拍手を終えて、「良いコンサートを聴いた」と笑顔でホールを後にし、駅のホームで電車を待っている頃には、すでに前の電車に乗っている楽員も多いのです。
(文=篠崎靖男/指揮者)
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