セブンイレブン「24時間営業」破りの店舗オーナーへの同情論は正しいのか?
「日本企業には優れた技術があるが、マーケティングのノウハウがないために海外企業に負けてしまう」という解説がよく聞かれ、書店にはマーケティングに関する書籍があふれているなか、本連載でもマーケティングの基礎の基礎を解説している。今回はセブンイレブンのフランチャイズ店舗である東大阪南上小阪店が、本部に無断で24時間営業から営業時間を短縮した一連のニュースに着目し、チェーン店とは何かを考えていきたい。解説は立教大学経営学部教授の有馬賢治氏だ。
仕入れ価格の交渉がしやすいチェーン店
――チェーン店にはどのような種類があるのでしょうか。
有馬賢治氏(以下、有馬) まずは「フランチャイズ・チェーン(FC)」。FCは独立したお店が本部と一対一で契約をし、店舗名称、経営ノウハウを使用する代わりに、本部にロイヤルティを支払うチェーン形態で、今の日本ではもっとも一般的ですね。次に「レギュラー・チェーン(RC)」は、ひとつの会社が直営店を経営する形態で、11店舗以上で展開する百貨店、有名アパレル専門店、ホテルなどがそれにあたります。さらにスーパーの全日食や名古屋を中心に展開する家電のコスモス・ベリーズなどの「ボランタリー・チェーン(VC)」という独立した店舗が自主的に集まり、ゆるやかに共同しているチェーンもあります。
――チェーン店のメリットは?
有馬 まず、店舗運営や従業員研修などのマニュアルを一つ作れば、複数の店舗で利用できる点があります。また、店舗間で情報共有ができるので、売れ筋商品を見つけやすくなる側面や、顧客側からするとよく知っているお店だけに入店に心理的抵抗が少なく利用しやすい気持ちにさせられることも挙げられます。そしてなんといっても、本部が一括して大量に仕入れることにより、卸売業者やメーカーとの仕入れ価格の交渉がしやすくなるのが大きなメリットといえます。
――個人店よりも仕入れ面で有利になると?
有馬 そうです。マーケティングの4P(Product「製品」、Price「価格」、Place「流通」、Promotion(販売促進))における流通、つまり“マーケティング・チャネル”の話になりますが、コンビニ、個人店を含めた「小売店」とは基本的には仕入れた商品を販売するお店をさします。仕入れには問屋やメーカーから買いつける必要があるのですが、一店舗の小売店では販売できる量に限りがあり大量には仕入れられません。
一方、チェーン店は一括して大量に仕入れられるので、販売者との値引き交渉がしやすくなるメリットが生まれるのです。また、物流の面を考えても、同じ理由でチェーン店のほうが利便性や効率のうえで有利であるといえます。