昨年11月頃から景気後退局面入りの可能性…消費増税見送りも含めた議論本格化か
1-3月期は大幅マイナス成長の可能性
足元の経済動向について、筆者の懸念が現実味を帯びてきている。背景には、日本の製造PMI(景況指数)を見ると、昨年1月から急落し、今年2月には30カ月ぶりに好不調の分かれ目となる50割れとなっていることがある。
また、経済成長率が鉱工業生産の変化率と関係が深いことから見れば、日本経済は 2019年1-3月に大幅マイナス成長になる可能性も出ている。実際、2019年3月分の生産予測指数の経産省試算値を基に2019年1-3月期の前期比を機械的に計算すると、前期比▲2.8%と大幅マイナスになると試算される。
この結果に基づけば、すでに昨年4-6月期が水準のピークとなっている実質GDPが2019年1-3月期に大幅マイナス成長になる可能性もあり、非常に厳しい状況といえる。
一般的に、景気がピークアウトしたことを簡便的に判断するには、経済成長率が2期連続でマイナスになったか、もしくは景気動向指数の一致CIや鉱工業生産がピークアウトしたか等により判断される。こうしたなか、このまま景気後退が認定されなければ、2019年1月には戦後最長の景気拡大期間となる 73か月を更新することになっていた。
一方、景気の現状を示す代表的な指標とされる一致CI・鉱工業生産指数とも2018年10月をピークに低下基調にあることからすると、景気後退時期に関する議論が盛り上がることも不思議ではない。ただし、そもそもこうした判断はあくまで目安にすぎず、経済成長率や鉱工業生産、一致CI等の動向を見ているだけでは、景気の正確な転換点は決められない。
景気後退の判断が予想通り盛り上がってきた
正確な景気の山谷は、政府の景気動向指数研究会によって、ヒストリカルDI(以下HDI)を計算して決められる。HDIはDIの一致指数として採用されている9系列の山・谷を決定し、景気拡張期は+、後退期は-に変換して新たにDIを作り直すことにより求められる。そして、HDIが 50%を切る直前の月が景気の転換点となる。
なお、各指標の山谷は、全米経済研究所(NBER)が開発したブライ・ボッシャン法という手法を用いて設定される。この手法では、3種類の移動平均をかけたデータについて検討を行い、(1)山やその後のデータの値より高いこと(谷はその逆)、(2)山や谷が系列の終了時点から6カ月以上離れていること、(3)山と山、谷と谷が15カ月以上離れていること、(4)山と谷が5カ月以上離れていること、等の条件を考慮して山谷が確定される。このため、実際の景気の山・谷は、発生してから1年以上の期間をおいて十分なデータが得られたところで決定されることになっている。