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経団連、新興IT企業に手当たり次第に入会打診…会長・副会長に新興IT企業も女性もゼロ

文=編集部
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経団連、新興IT企業に手当たり次第に入会打診…会長・副会長に新興IT企業も女性もゼロの画像1経団連会館(写真:金田啓司/アフロ)

 中西宏明会長(日立製作所会長)率いる日本経済団体連合会(経団連)は、先端技術を生かして経済発展を目指す行動指針「ソサエティー5.0」を掲げている。かねて経団連は重厚長大型の企業を中心に運営してきたが、IT企業やニュービジネスが加盟する必要があるとして、2018年11月に入会規定を12年ぶりに改定した。純資産額10億円以上としていた加盟の資格を1億円以上に大幅に緩和した。

 同年12月、7社が入会した。アマゾンジャパンとクラウド子会社のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が新しく加盟した。「GAFA」と呼ばれるIT大手4社のうちフェイスブックを除く3社が加盟したことになる。グーグルの日本法人は12年に、アップルジャパンは18年1月に経団連のメンバーになっている。

 18年12月には、スマホで簡単に売り買いができるフリマアプリのメルカリも入会した。19年1月は入会ゼロだったが、2月は12社、3月は23社が加盟した。

 目下、デジタル技術に強みを持つ約60の新興企業に入会を打診している。経済産業省が新興企業を支援するプログラム「J-Startup」の対象になっている会社群だ。ITプラットフォームを運営したり環境・エネルギー分野に取り組む企業などが対象である。

 J-Startup企業約60社のうち、すでに入会しているメルカリのほかにも、3月に2社が加盟した。自動車の遠隔制御技術を手掛けるグローバルモビリティサービス(GMS)が1日、バーチャル・リアリティ(VR)プラットフォームを提供するInstaVRは15日に入会した。

 さらに、入会の打診を受けているStartup企業をピックアップしてみる。

・Origami…スマホ決済アプリを提供。有力な上場予備軍である。
・CYBERDYNE…ロボットスーツHALを開発。東証マザーズ上場。
・すららネット…ゲーム感覚で学習するデジタル教材を企画・開発。低学力の生徒に適応するオンライン学習教材を塾や学校に提供している。東証マザーズ上場。
・PKSHA Technology…AI(人工知能)を活用した機械学習。深層学習などAIアルゴリズム機能を開発・提供する。東証マザーズ上場。
・ビズリーチ…国内最大級のハイクラス転職サイト。有力な上場予備軍。
・ペプチドリーム…東京大学発のバイオベンチャー。東証1部上場。
・マネーフォワード…個人向け家計簿アプリ「マネーフォワード」と法人向けの「MFクラウド」シリーズの2本柱。毎日のお金の出入りを自動で見える化。東証マザーズ上場。
・ユーグレナ…藻の一種であるミドリムシを活用した食品・化粧品の開発。社長の出雲充氏は有名経営者。東証1部上場。
・ラクスル…ネットで低価格で小口の印刷物が注文できる印刷通販サイト。東証マザーズ上場。
・リプロセル…iPS細胞関連の研究・試薬を手掛ける創薬ベンチャー。ジャスダック上場。

 18年5月31日時点で経団連には1376社が入会している。18年度の入会数は19年3月末時点で66社・団体と、17年度の37社・団体を大きく上回る。呼び掛けに呼応して新興IT企業の入会が、さらに増加する見込みだ。

経団連改革の成否は、女性副会長の起用にかかる

 中西会長は「女性、IT、ベンチャー企業のStartupが経団連に入ってくるべきだ」と“新しい風”を期待していた。しかし、今年の副会長の人選では旧態依然としたまま、ベンチャー企業は入らず、女性の副会長も誕生しなかった。

 経団連の活動は従来型の重厚長大企業が主要ポストを占めており、加入した新興企業のトップの意見がすんなり通るような体制にはなっていない。中西氏は会見で「(人事は)相応の時間、手順、周囲の納得が必要だ」と述べている。

 副会長の登竜門といえる審議員会副議長には、浅野邦子・箔一会長の続投が決まった。箔一は石川県金沢市に本社を置く企業。浅野氏は金沢の金箔など「金沢箔」を軸に事業を展開する起業家である。経団連の歴史の中で女性が副議長に就いたのは、BTジャパンの吉田晴乃・元社長に次いで2人目。現在は浅野氏が唯一の女性副議長だ。

 東京商工リサーチがまとめた18年3月期の上場企業2375社の女性役員の比率は、わずか3.8%にとどまる。女性役員がゼロの企業が上場企業の65.8%を占める。政府の男女共同参画基本計画では、20年までに女性役員の比率を10%にすることを目標にしているが、目標達成は絶望的な状況だ。

 経済界の司令塔である経団連の女性役員が、副会長ポストはゼロ、副議長は浅野氏1人というのでは、お寒いかぎりだ。中西会長が「女性とITの活用」の音頭を取っても、誰も踊らない、踊れないのが実情なのだ。
(文=編集部)

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