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2018年の総賃金を過小評価する毎月勤労統計
こうした点を補うため、総務省が公表している「労働力調査」を見てみよう。労働力調査は、一定の統計上の抽出方法に基づき選定された全国約4万世帯を対象に、我が国の就業状況を安定的に捉えることを目的としている。一般的には失業率を計測する統計と認知されているが、常用以外も含んだ雇用者数の実数を調べていることから、毎月勤労統計の常用雇用指数よりも雇用の実態をあらわしていると見られており、GDP速報の雇用者報酬を推計する際にも重視されている。
そこで、労働力調査の「雇用者数」の動きを見ると、2017年は毎月勤労統計の「常用雇用指数」と同様に増加基調にあったことがわかる。しかし、2018年以降は常用雇用指数のような不自然な段差はまったく生じていないことがわかる。同じグラフで比較すると、毎月勤労統計の「常用雇用指数」はサンプル替えの2018年1月で不自然な断層が生じていることがわかる。
賃金の実勢を判断するには、雇用者数の増加が押し下げに作用してしまう従業員の平均賃金だけでなく、従業員の平均賃金に従業員数を乗じた「総賃金」も合わせてみることが重要である。幸いにもこの点では、マクロの「総賃金」を示すGDP速報の「雇用者報酬」が従業員数を労働力調査の雇用者数メインで推計しているため、大きな問題は生じない可能性が高い。
しかし、毎月勤労統計の常用雇用指数ではサンプル替えのあった2018年1月から断層が生じていることからすれば、今回の毎月勤労統計の再集計値に基づいて、総賃金を過少に評価すべきではないと思われる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
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