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トヨタ、HV特許無償開放の逆転の戦略…絶え間ない“成功体験の否定”で世界独り勝ち

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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トヨタ、HV特許無償開放の逆転の戦略…絶え間ない“成功体験の否定”で世界独り勝ちの画像1トヨタ・C-HR(「Wikipedia」より/Tokumeigakarinoaoshima)

 足許のトヨタ自動車の業績は良い。これは、世界の自動車業界のなかでも特筆すべき実績だ。トヨタは円高という逆風に直面しつつも営業増益を確保した。世界の自動車業界を見渡すと、最大の独フォルクスワーゲンをはじめ国内外の大手自動車メーカーが苦戦している。そのなかで高収益を誇るトヨタのモノづくりとテクノロジーは、世界から高い評価を得てしかるべきだ。こうした状況は、むしろトヨタにとって大きなチャンスだ。

 それに加えて、トヨタは電気自動車(EV)など新しいモビリティー開発競争の主導権を獲ろうとしている。そのために、同社は世界の自動車ビジネスをあっと驚かせたハイブリッド自動車(HV)システムの特許を開放し、エコシステムの拡大を狙っている。

 HVシステムの無償解放の裏には、企業の風土を変革したいというトヨタ経営陣の狙いもある。トヨタは過去の成功体験を捨て、常に新しいことにチャレンジし、変化を生み出し、より素早くダイナミックに変化をとらえる組織風土を生み出そうとしている。

トヨタの強さを証明した通期決算

 
 2019年3月期の決算にてトヨタの売上高は初めて30兆円を突破した。新興国通貨安など為替レートの変動が収益を500億円押し下げたが、原価の改善や営業努力がそれを上回り、営業利益は前期から増加し、約2.5兆円だった。この業績はトヨタの強さのあらわれだ。

 足許、国内の自動車メーカーは減益圧力に直面している。日産自動車は米国などでの販売不振から業績予想を下方修正した。ホンダも営業減益が続いている。
 
 海外に目を移すと、ドイツ自動車企業の苦戦が目立つ。米中の貿易戦争の影響に加え、中国経済の減速により、ドイツ勢の中国事業には急ブレーキがかかっている。減税が実施されたにもかかわらず、中国の新車販売台数は4月まで10カ月連続で減少した。世界最大の自動車企業であるフォルクスワーゲンは、ディーゼル排ガス不正問題の影響を克服できていない。

 一方、中国市場において、トヨタは急速に競争力を高めている。なかでも価格帯の高いレクサスブランドが好調だ。

 トヨタと他の自動車企業の業績を分けたのは、モノづくりへのこだわりだろう。近年、世界全体で問題となっているのが“人手不足”だ。中国などでは経済の成長に伴い、人件費が増えてきた。品質が高く、高付加価値の製品を、より効率的に生産するために、国内に製造拠点を回帰させる日本企業が増えている。トヨタは九州の工場でレクサスブランドの完成車を生産し、中国に輸出している。つまり、同社は人手不足や貿易戦争という環境の変化にうまく適応し、他の企業が苦戦するなかで収益を確保できた。

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