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トヨタ、HV特許無償開放の逆転の戦略…絶え間ない“成功体験の否定”で世界独り勝ち

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 トヨタは、HVという成功体験を自ら取り払うことによって、常にチャレンジし、より良いモビリティーのテクノロジーや技術を生み出す人材を育てたい。トヨタは、常に神経を研ぎ澄ませ、新しい発想やモノを既存のものと結合し、従来にはないテクノロジーを生み出す人材を増やしたいのだろう。

 トヨタの豊田章男社長は、終身雇用の維持は難しくなっているとの認識を示した。わが国の終身雇用制度は組織の和を高めることには重要な役割を果たした。高い経済成長率が続いている経済環境であれば、その発想は相応に有意だった。ただ、変化を楽しみ、オープンイノベーションを目指し世界と協働することを考えると、新しい生き方が求められる。

 自社の宝であるHV技術の特許を開放すれば、多くの従業員がグローバルな競争に対応し、生き残ることができるか、危機感を覚えるはずだ。それが、新しい取り組みへの触媒となることを、トヨタは期待している。危機感を持つことは、競争原理を発揮し、より効率的な資源の配分や、新しい発想の実現を目指すために欠かせない。モビリティーのプラットフォーマーとしての地位を高めるためにトヨタは選択と集中も進めている。同社が、パナソニックと住宅事業を統合し、自立した経営を目指しているのはその考えの表れだ。

 トヨタが新しい発想のもとに経営風土とビジネスモデルの変革を進めることができれば、わが国における“生き方”“働き方”に関する考え方にも大きな変化があるだろう。その意味で、トヨタがどのように変革を進め、成長を目指すか、非常に楽しみだ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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