6月25日の定時株主総会を控え、LIXILグループ(以下、LIXIL)の次期取締役構成をめぐって、潮田洋一郎会長兼CEO(最高経営責任者)の意向を受ける会社側と、瀬戸欣哉前CEOを旗頭に立てた株主側が、水面下でつばぜり合いを激化させている。海外機関投資家が推す瀬戸氏は取締役の一部や旧INAX (LIXILの前身)の企業城下町である常滑市、上級執行役など多くの利害関係者から支持を得ており、会社側よりも多くの信任を得ているように見えるが、議決の行方を左右する波乱要因も浮上している。
LIXILが株主に送付した株主総会の招集通知に記載された第1~3号議案を見ると、第1号議案が会社提案の取締役候補8人を選任、第2号議案は会社と株主が共通して推す取締役2人を選任、第3号議案は株主提案の候補6人の選任――となっている。潮田氏対瀬戸・株主連合の相克という構図がはっきりとした議案の構成だ。
議決権行使助言会社が混迷に拍車をかける
これに対し、首を傾げたくなるような意見を表明したのは、議決権行使助言会社だ。グラスルイスの意見は、LIXILが提案した取締役候補を推奨し、株主提案からは3人だけを推奨。その理由は「取締役の90%を社外取締役で占めているLIXILの提案のほうが優れている」とごく表面的な理由を挙げている。
LIXIL提案の候補は全員新任であるため、同社に関する知識がないうえに経営の継続性がない――という株主側の主張に対しては、グラスルイスは「LIXILが提案した候補はすでに社内取締役と意見交換を始めているうえに、社内取締役は定時株主総会後にアドバイザーになる者もおり問題はない」と説明している。
妙な理屈だ。「臨時株主総会で解任請求を受けた潮田氏らと、それを支持した取締役が影響力を残すとして懸念している」との株主側の言い分を待つまでもなく、会社を私物視する経営者を排除することを目的に潮田氏の解任請求がなされたという経緯を忘れてしまっているかのようだ。利害関係者がそっぽを向いている潮田体制を継承すれば、LIXILが社の内外で求心力を保てるのかどうかも不透明だろう。
そもそも議決権行使助言会社の情報収集能力には問題があるのではないか。瀬戸氏と協調している伊奈啓一郎取締役について、グラスルイスは「取締役会の内容を外部に漏らすのは守秘義務違反」として問題視しているが、その言い分は腹話術の人形のようにLIXILの立場を代弁しているにすぎない。