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国軍による圧政の資金源か…欧米企業が一斉撤退のミャンマーで経産省がいまだ事業継続

文=Business Journal編集部
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ミャンマー(「gettyimages」より)

 ENEOSホールディングス(HD)と経済産業省はミャンマーの天然ガス採掘事業からの撤退に向けて協議中だったが、ENEOSは5月2日、撤退すると発表した。三菱商事はすでに撤退を表明している。軍事クーデターの発生後、大弾圧を行っている国軍の収入源になっているとの国際的な批判が強まり、事業継続が困難と判断した。

 ENEOSの前身の日本石油が1991年、権益を獲得し、南部沖にあるイエタグンガス田で2000年から生産を開始した。経済産業省とENEOSHD傘下のJX石油開発、三菱商事の3者による共同出資会社JXミャンマー石油開発が19.3%の権益を持つ。

 ENEOSHDの有価証券報告書によると、21年3月期時点でのJXミャンマー石油開発の資本金は35億4000万円。出資比率は経産省が50%、JX石油開発が40%、三菱商事が10%だ。三菱商事は13年、同事業に参画したが、近年は産出量が減り、技術的な理由で生産停止が相次いでいた。他の資源開発と比べて収益性が低いこともあって事業継続が難しくなっていた。

 三菱商事はミャンマーで工業団地の運営やインフラ関連、不動産などの事業を行っている。こうした事業については「今後の情勢を見ながら総合的に判断する」としている。三菱商事に続いてJX石油開発も持ち分を手放す方向で協議に入った。民間2社の撤退方針を受け、経産省も出資引き揚げは避けられない。権益の売却先が見つかるかは不透明で、一定の損失が出ると見られている。

 イエタグンガス田の権益は日本勢のほか、マレーシアの国営石油会社ペトロナス傘下のペトロナス・チャリガリ・ミャンマーが40.9%、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)が20.5%、タイ国営PTT傘下の探鉱・開発会社PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)が19.3%を握る。産出した天然ガスはパイプラインを通じてタイに輸出される。マレーシアとタイの国営石油会社も4月に撤退を発表した。2月18日にロイターは、操業主体(オペレーター)のペトロナスが権益の売却手続きを進めていると報じていた。

ミャンマー国軍に対して国際社会から批判

 イエタグンガス田に埋蔵されているガスは数年以内に枯渇するといわれている。採算悪化のほかに国際社会からの批判の高まりが撤退の背景にある。ミャンマーの人権団体、ジャスティス・フォー・ミャンマーが、資源開発の収益が石油ガス公社(MOGE)を通じて国軍に流れ、圧政の資金源になっているとし、外資に撤退を要求していた。

 これを受けて、ミャンマーでガス田運営事業などにかかわってきたエネルギー大手の仏トタルエナジーズ(旧トタル)や米シェブロンは1月、タニンダーリ沖の天然ガス田ヤダナからの撤退を発表した。

 トタルエナジーズやシェブロンは、クーデター後は配当金の支払いを止めて国軍に資金が渡らないようにしてきたが、「人権や法の支配が悪化し続けており、状況を見直すことにした」と説明した。オーストラリアの石油大手ウッドサイド・ペトロリアムも同月、ミャンマーで複数保有する天然ガスの鉱区から撤退する方針を明らかにしている。

 一方、ミャンマーのガス田から天然ガスを輸入しているタイ国営のタイ石油公社(PTT)がトタルエナジーズの権益を取得した。欧米勢が一斉に撤退するなか、韓国のポスコインターナショナルは追加投資を決めた。

 ノルウェーの通信大手テレノールなどが、いち早く撤退を表明。欧米企業の決断は速い。日本企業では国軍系企業と合弁でビールを醸造してきたキリンホールディングスが持ち株の売却の手続きを進めているが難航している。

(文=Business Journal編集部)

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