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成城石井が上場へ、魅力喪失の懸念…親会社ローソンが日販急減で苦境

文=Business Journal編集部
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成城石井(「Wikipedia」より)

 ローソンは完全子会社の高級スーパー、成城石井(横浜市)を23年度までに東京証券取引所プライム市場に上場させることを目指す。年内に上場を申請するとみられている。上場時の時価総額は2000億円を上回るといわれており、食品スーパーではヤオコーに次ぐ規模となる。親会社ローソンは成城石井の持ち株比率を50%未満に引き下げ、調達した資金はローソンの成長資金に充当する。

 成城石井の社名は、成城学園駅前(東京都世田谷区)に1927年に創業した果物店に由来する。戦後、輸入食料品を扱う高級スーパーとして多店舗展開を開始したが、その後は転売の連続だった。2004年、焼肉チェーン「牛角」を運営するレインズインターナショナルが買収。11年、三菱商事系の投資会社、丸の内キャピタルに経営権が移った。14年、ローソンが丸の内キャピタルから成城石井の全株式を550億円で買い取り完全子会社とした。

 現在、成城石井は首都圏を中心に約200店舗を展開。国内外の高品質な食品や飲料を取り揃え、ワインバーも運営。自社工場でつくる和洋中さまざまな総菜やハンバーグなどのプライベートブランド(PB)商品の評判が高い。東は宮城、西は岡山まで出店しているが、岡山以西への出店が今後の課題といわれている。

 22年2月期の売上高にあたる営業総収入は前期比5.4%増の1086億円、営業利益は8.8%増の112億円と4期連続の増益。ローソンの子会社でもっとも稼いでいる。

平均日販でファミマに逆転されたローソンの浮揚策

 セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ大手3社を比較すると、ローソンは収益力で3位だ。

【コンビニ大手3社の22年2月期の業績】

           営業収益       営業利益

・セブン-イレブン    8732億円(1.7%)   2233億円(▲4.4%)

・ローソン                6983億円(4.9%)     470億円(15.2%)

・ファミリーマート      4514億円(▲4.6%)  653億円(▲8.3%)

( )内は前年同期比伸び率(%)。▲はマイナス

 ローソンは国内コンビニエンス事業は減益だが、成城石井が伸び、チケット販売などエンタテインメント関連事業が黒字に転換したことで増収・増益となった。コンビニエンスストアは、かつては小売業の勝ち組として我が世の春を謳歌してきたが、市場が飽和状態になったうえに、サービスの同質化などコロナ禍に次々と問題が浮上した。

 21年はコンビニ業界の試練の年だった。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初、営業閉鎖に追い込まれた百貨店など他の小売業に比べて、コンビニは生活インフラとして危機に強いと見なされていた。阪神淡路大震災や東日本大震災の際にも日用品の供給を続けたのがコンビニだったからだ。

 ところが、ドラッグストアや食品スーパーが“コロナ特需”に沸く一方、コンビニは独り負けの苦渋を味わう破目に陥った。不振の理由の一つが立地だ。コンビニは都市部のオフィス街など、稼げるエリアへの出店を強化してきたが、コロナ禍でこれが完全に裏目に出た。外出自粛やリモートワークの普及でオフィス街に立地する店舗の売り上げが激減した。

 その結果、店舗平均売上高(平均日販)が21年2月期に急落した。最大手のセブン-イレブンが64.2万円と前期比1.4万円減とマイナスが小幅にとどまったのに対して、オフィス街に多く店舗を持つファミマとローソンは大きく下落した。ファミマは49.3万円で前期比3.5万円減、ローソンは48.6万円で同4.9万円減だった。

 ファミマ、ローソンとも日販が50万円の大台を割り込んだ。落ち込みが最も大きかったローソンはファミマに逆転を許し、3位に後退した。22年2月期の平均日販はファミマが51.1万円で前期比1.8万円増、ローソンが49.8万円で同1.2万円増とやや復調したものの、コロナ前の水準には遠く及ばない。ローソンは50万円台に浮上できず、ファミマとの差を縮めることができなかった。

「お客様の日常生活をローソンですべて請け負いたい。ワクワクするようなマーケティングをこれから入れていく」

 ローソンの竹増貞信社長は22年2月期の決算説明会後、取材で「ローソンのストアブランドを向上させる必要がある」と力説した。「日常をローソンでと言われ続けるためのマーケティングが必要」との認識を示した。ファミマに抜かれ、3位が定着しかねないコンビニ事業の再生資金を調達するために“虎の子”の成城石井を上場させることにしたわけで、切羽詰まった事情があったのだ。

 成城石井が株式を公開し、決算期ごとに利益を追うようになると、成城石井の魅力が薄れるのではないかという見方もある。成城石井の成長を実現しながら、ローソンの業績にも寄与する、両にらみの経営手腕が求められる。

(文=Business Journal編集部)

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