スポーツ用品最大手アルペンがアパレル大手TSIホールディングス(HD)の発行済み株式の3.7%にあたる359万7100株を取得した。総額10億円を投下した。TSIHD株の9%を保有する筆頭株主の日本政策投資銀行(DBJ)から株式を譲り受けた。DBJは大和証券系の大和PIパートナーズにも保有するTSIHD株を譲渡する。
DBJはTSIHDと2015年7月に資本・業務提携した。経営戦略の立案やM&A、人材の紹介などで支援してきた。TSIHDは17年に米アパレルブランド「ハフ」、18年にカジュアル衣料の上野商会を買収するなど一定の成果を上げた。しかし、独自の成長戦略を推進するとして、19年7月、DBJとの提携を解消した。だが、保有株の取り扱いは決まっていなかった。
旗艦店「アルペントーキョー」を新宿駅東口にオープン
アルペンは4月1日、東京・新宿駅東口にグループ最大級の旗艦店「Alpen TOKYO(アルペントーキョー)」をオープンした。社運を賭けた店舗といえる。ヤマダホールディングスの「LABI新宿東口館」だった店舗だ。ヤマダは子会社、大塚家具の新宿ショールームとの競合を避けるため20年10月に閉館していた。
駅東口から徒歩1分のビルの地下2階~地上8階までの全10フロア。売り場の延べ床面積は1万2000平方メートル。「スポーツデポ」やアウトドア専門店「アルペンアウトドアーズ」、ゴルフ専門店「ゴルフ5」が入る。
6階と7階がゴルフ関連の売り場だ。アルペンはゴルフ事業を強化している。6階の「ゴルフ5」にはゴルフブランドの複合ショップ「ザ・ハウス」が出店。TSIHDが保有する「パーリーゲイツ」や「ジャックバニー」といったゴルフをする際に着るアパレルブランドを揃えている。
アルペンは会見で「TSIHDが持つブランドで差別化を図ることができれば……」と語っている。新宿は伊勢丹新宿店や小田急百貨店新宿店などの百貨店がゴルフ売り場に力を入れている、ゴルフ関連商品の大激戦区だ。
アルペンの21年6月期の連結決算は売上高が前期比7%増の2332億円、純利益が107億円(20年6月期は1700万円の利益)で過去最高となった。新型コロナウイルスが流行するなか、「3密」を避けるレジャーとして、ゴルフやキャンプが人気となった。22年6月期の売上高は2380億円、純利益は70億円を見込む。一転して34%の減益となるのはスポーツ用品の全般の需要が回復しないためだ。アウトドア用品やゴルフ関連だけでは力不足なのだ。
アルペンは国内に400店を持つが、駅からは離れた郊外店が中心だった。新宿の巨艦店で勝負に出た。創業者の水野泰三氏(73)は21年2月、女性問題で代表取締役会長を辞任していたが、「当事者間で問題が解決した」として、21年9月の定時株主総会で取締役名誉会長に復帰。今年3月に代表取締役会長になった。経営環境が大きく変わっており、営業の第一線に戻った創業者が陣頭指揮を執る。
アルペンは逆張り値下げ
「Alpen TOKYO」に逆張り値下げをアピールする看板があった。このご時世に値下げしたのはPBブランドの「ティゴラ」の春夏向け商品。Tシャツやパーカー、ズボン、カーディガンなどだ。値引き率は平均20%以上で、なかには半額のものもあるという。
これまで中国で生産してきたものをベトナムやインドネシアに移し、利益を確保しながら値下げに踏み切ったのだ。「あらゆる物の値段が上がるときだからこそ、値下げをテコにプライベートブランド(PB)を認知してもらうチャンスだ」と判断した。アルペンの逆張り値下げ作戦は成功するのだろうか。
(文=Business Journal編集部)