「家にテレビがない」という生活スタイルが広まるなか、NHKがスマートフォン保有者からも広く受信料を徴収する動きを本格化させている――。総務省は21日、「公共放送に関する有識者会議」の初会合を開き、NHKのインターネット事業をテレビ放送と同じく本来業務として認めるかどうかについて議論をスタートさせた。NHKの番組は現在でも、放送受信契約を結んで受信料を支払っていれば、サイト「NHKプラス」などで地上波放送とリアルタイム、もしくは放送後に見逃し配信というかたちで視聴することが可能。有識者会議では、ネット事業の拡大やそれに伴う費用の財源、新たな受信料制度などについて議論を進め、来年6月をメドめどに議論を取りまとめるとしている。
特に世間的な関心が高いのは、受信料制度に関する部分だろう。現在では「NHKの放送を受信できるテレビ(チューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末などを含みます)を設置」(NHKのHPより)すると放送受信料を支払わなければならないが、若者層を中心にテレビを保有しない人が増加。加えて、地上波テレビ放送を視聴することができないためNHK受信料を払う必要がない「チューナーレステレビ」も人気となるなど、“NHKは見ないから受信料は払わない”という動きも広まりつつある。
すでにNHKは2017年に公表したNHK受信料制度等検討委員会の答申案で、スマホやインターネットの利用者からも受信料を徴収する検討を始めており、今回の有識者会合でもテレビを持っていなくてもスマホなどで積極的に放送を見る人については「負担を議論していく必要がある」との意見が有識者から出ているが、SNS上では次のような声があがっている。
<これはあまりにも強引な論理じゃないのだろうか?まず、スマホでテレビを見る人と見ないをどうやって分けるのか>(原文ママ、以下同)
<いい加減、不要と主張してる人間からまで無理矢理奪うようなやり口はやめるべきです>
<携帯各社は障害時の相互ローミング体制の整備に着手していますが、このインフラに乗っかるだけのNHKにこれ迄同様の異様に高額な受信料を払い続ける必要はありません>
<昔は全員徴収に意義があったのかもしれませんが、時代は変わって来ています。時代に合った受信料徴収の仕方をするべきではないかと思います>
<ネット環境あるだけでNHKどころか、テレビすら見ないと言っているのに徴収しようとするなら普通に考えて押し売りでしかない>
<NHKを経由せずとも、気象庁や防災アプリなど情報提供会社から直接情報を入手するのが一般的になりつつあり、NHKが防災に必要不可欠という時代は終わってます>
<ライフラインのように、今のように法で守らないといけないほどの価値はなくなっている。他に代わりになるものは溢れ、NHKも一部に忖度し公正な立場でもなくなった。役割に幕を閉じるべき時に、屁理屈をこねて既得権益にぶら下がろうとしてる人たちの延長を認めるべきではい>
組織の存続に動くNHK
テレビ局関係者はいう。
「テレビを持っていなくてもスマホを持っていればNHKが受信料を徴収できるようになるのは、既定路線だと業界内では見られている。特に10~30代の間では、番組の放送開始時間に合わせてテレビを視聴するという生活習慣そのものが廃れつつあるなか、ネット、つまりスマホ向けサービスの拡充と“漏れなく広く受信料を徴収”という2つの実現を同時に目指すのは当然。そして今では40代にまでテレビを持たないというスタイルが広がるなか、NHKが組織の存続のために、そうした流れに対抗しようとしているのは明白。
民放各局がこぞってネット事業に注力している今、こうしたNHKの動きに対して民業圧迫という批判はすでに出ている。『災害報道や政見放送などのためにNHKは必要』という声もあるが、そうした国民にとってエッセンシャルな情報の発信のみを国が肩代わりして運営すれば、今のNHKのような巨大な組織を通じてやるよりはるかに低コストでできるかもしれない。たださえ時の政権寄りとされる報道に加えて、バラエティやドラマ、情報番組などを、国民から集めた受信料を使ってNHKがやる必要はあるのかという問題もある。より広く受信料を集めることを検討するのであれば、同時にNHKのあり方、存在の必要性そのものを根本から議論する必要があるのでは」
当サイトは22年2月23日付記事『NHK受信料、スマホ保有者・ネット利用者からの徴収の検討を本格化か…存続に疑問も』で受信料をめぐるNHKの動きを報じていたが、改めて再掲載する。
※以下、肩書、時間表記、数字等は掲載当時のまま
――以下、再掲載――
NHKがスマートフォン保有者から受信料を徴収する動きを本格化させるのではないかと、話題になっている。
「日刊ゲンダイDIGITAL」は23日、記事『ドンキ「地上波映らないテレビ」バカ売れでNHKに焦り? スマホ保有者から受信料徴収か』を掲載。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が昨年12月に発売した、チューナー非搭載で地上波放送を受信できない「AndroidTV機能搭載フルHDチューナーレススマートテレビ」が大ヒットしており、NHKがスマホ保有者からも受信料を徴収する流れを加速させるのではないかと報じている。
チューナー非搭載のテレビではNHKの放送を受信できないため、保有者はNHK受信料を支払う必要はないが、すでにテレビを持たない人が増えているなか、NHKは受信料収入が減少する事態を懸念しているのではないかと「日刊ゲンダイ」は分析している。
この記事を受け、23日にTwitter上では「受信料徴収」「スマホ保有者」というキーワードがトレンド入りするなど反響を呼び、以下のようなコメントが寄せられている。
<勝手に契約迫り拒否できない。テレビがいらないからと捨て始めたら今度はスマホから取る?>(原文ママ、以下同)
<何言ってるか解らないね。スマホでNHK視聴とか有りえないし。払う義務無いよ。無理なら局解体で良いよ。イラない>
<国民からどうやって受信料を取る事しか考えてないNHK>
<NHKひいては地上波自体がいらないという世論なら諦めてくれよと思うんだが ネットの広告収入やサブスクで経営してくれ>
<NHKにはお金出してまで見たいものがないってこと。客が求めてないのに買え買え、いらなくても金払え って>
<インターネットが民間に普及するために一般企業がこれまで必死こいてやってきたのに、NHKは何かやってきたのか>
<実際のところ、災害時のNHKって広域放送だから情報の役に立たないんですよね。自治体の有線放送や気象庁、国土交通省のサイトがあるので>
NHKの答申案
すでに知られているように、NHKは2017年に公表したNHK受信料制度等検討委員会の答申案で次のように方針を定めており、スマホやインターネットの利用者からも受信料を徴収する検討を始めている。
「放送の常時同時配信は、NHKが放送の世界で果たしている公共性を、インターネットを通じても発揮するためのサービスと考えられ、インフラの整備や国民的な合意形成の環境が整うことを前提に、受信料型を目指すことに一定の合理性があると考えられる」
「既に放送受信契約を結んでいる世帯に対しては追加負担を求めないことが適当」
「それ以外の世帯の費用負担の性質としては、受信料型を目指すことに一定の合理性有り」
「受信料型の場合にパソコンやスマホなどを所持・設置したうえで常時同時配信を利用するために何らかのアクションもしくは手続きをとり視聴可能な環境をつくったものを費用負担者とすることが適当」
さらに、19年に最高裁判所は、テレビのワンセグ放送を受信できる携帯電話を保有している場合、NHKと受信契約を結ぶ義務があるとする判断を下しているが、テレビ局関係者はいう。
「NHKが数年前から着々と、スマホ保有者から広く受信料を徴収できるように“下地づくり”を進めていることは明らかで、実際にその環境は整いつつある。たとえば東京五輪や北京五輪の開会式や競技の中継をスマホで見ていたという人も一定数おり、NHKが“テレビを持っていなくてもスマホでウチの放送を見てるんだから、受信料を取って当然”と考えるのは理解できなくもない。
だが、NHKがIOCに支払う莫大な五輪の放映権料の原資は、もとをたどれば国民から徴収した受信料。NHKがなくなったとしても民放やネット配信で五輪は見れるので、国民は困らないし、今はNHKが開閉会式や多くの競技を中継しているから、私たちもNHKでそれらを見ているにすぎない。
“災害報道や政見放送、国会中継などのためにNHKは必要”という声もあるが、多額のコストを投入して運用されるNHKという組織がその機能を担う必要はなく、国がはるかに低コストでそうした情報を国民に向けて発信する仕組みを税金で構築すればよい。さらにいえば、受信料として集めたお金から多額の製作費を費やして、ドラマやバラエティ、『紅白歌合戦』などを制作する必要性があると考える国民が、どれだけいるのかという問題もあるし、事実上の民業圧迫だという批判は以前から業界内で根強い。
NHKが一組織である以上、自らの組織を存続させようとあらゆる動きを取るのは当然。そこは国が法律を変えるなどして、NHK解体も含めた新たな枠組みを模索しない限り、議論は進まないだろう」
(文=Business Journal編集部)