11日24時よりテレビアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系)の第1話が放送された。漫画家・藤本タツキ氏による同題作品をアニメ化したものであり、放送前から注目を集め、第1話の放送中から大きな話題になっている。
漫画版の『チェンソーマン』は第1部「公安編」が「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、現在は同社のウェブサイト「少年ジャンプ+」で第2部「学園編」が連載されている。アニメ版は、アニメーションスタジオ・MAPPAによる一社制作。声優は、主人公のデビルハンター・デンジ役に戸谷菊之介(幼少期は井上麻里奈)、デンジと暮らす「チェンソーの悪魔」ポチタ役に井澤詩織、デンジの上司で内閣官房長官直属のデビルハンター・マキマ役に楠木ともりが起用されるなどしている。
「もともと人気漫画が原作ということもありアニメもヒット間違いなしという見方が強かったが、YouTube上に掲載された予告動画が“神作画”だと絶賛され、放送開始前に1000万再生超えを記録。デンジ役の戸谷はほとんど“新人”同然の声優で本作で初めて主演を務め、主要キャスト陣に若手が起用される一方で、脇役には津田健次郎など実力派のベテランを起用。また、全編にわたりグロ規制は行われないなど、まさに異例ずくめでのスタートとなった」(PR・マーケティング会社プロデューサー)
(以下、ネタバレを含む)
制作会社MAPPAの実力
第1話は、ポチタとともにデビルハンターとして暮らしていたデンジが、ある日“裏切り”に遭って殺されてしまうが、薄れる意識の中でポチタと“契約”し、悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」として蘇る……という内容だった。
放送前、原作ファンの多くが気にしていたのは「どれくらいグロ規制が入るか」という点だ。デンジとポチタが殺されたり、「チェンソーマン」として蘇ったデンジとポチタが敵を殺したりするシーンは、凄惨な光景が繰り広げられるわけだが、アニメ版も初回から“全力全開”で、ネット上には
「原作通りにグロくてすごい!」
「規制されたら興ざめするところだったけど、安心した」
との書き込みが続出。なんなら
「アニメで動きがつくと、より生々しい」
「血しぶきの描写に遠慮がない」
という評価も。
当然、「グロいのが苦手だから、そんなにヤバいのかと思うと見るの迷う……」という声もみられたが、原作である程度の耐性がついているファンにとっては「最高!」だったようだ。
また、本編全体、オープニングやエンディングの映像に関しても「作画が良い」「動きがきれい」という声が多数寄せられている。制作のMAPPAは、2016年公開のアニメ映画『この世界の片隅に』や、同年10月期のアニメ『ユーリ!!! on ICE』(テレビ朝日系)、20年10月~21年3月まで放送されたアニメ『呪術廻戦』(TBS系)第1期、21年12月公開のアニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』などを手がけてきた実績があり、今回は『チェンソーマン』ファンをも納得させている。
全12話のエンディングは週替わり
そんなファンの間で盛り上がっている話題は、ほかにも。まずはアニメ版『チェンソーマン』のオープニングテーマ、米津玄師が歌う「KICK BACK」(22年10月12日配信リリース)についてである。同曲は米津が作詞・作曲し、編曲にはKing Gnu・常田大希も携わっている。さらに、02年2月にモーニング娘。がリリースした「そうだ!We’re ALIVE」の歌詞も引用されているというから驚きだ。
「そうだ!We’re ALIVE」の作詞・作曲を手がけた音楽プロデューサー・つんく♂は今年9月、自身のnote「つんく♂のプロデューサー視点。」内で、米津サイドから同曲のフレーズの一部を使用させてほしいと依頼があったことを明かしていた。
米津が「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR」の部分を使いたがっていると聞いた時、つんく♂は「同じクリエーターとしても制作途中のひらめきに関して、理由もクソもないだろう。そう閃いたのだからそうするのだ。こう考えるわけで、『うん。野暮は言いっこなしだ』 僕はこれ以上何も言わず、聞かず、途中経過も気にすることなく、『好きなようにやってもらえばいい。最終的に使わなかったらそれはそれ。作品というのはそういうものだ。』と、そう考えた」と、許可を出したそう。
その後、出来上がった曲「KICK BACK」を聴いて、つんく♂は「才能の塊というのは本当に恐ろしい」「作品ってこういうことだよなぁ」などと感じ、興奮したとつづっている。
もちろん、『チェンソーマン』ファンの間でも同曲の評価は高い。さまざまな考察も書き込まれていて、
「『チェンソーマン』は、モー娘。結成がしたのと同じ1997年の話だから……」
「『努力 未来 A BEAUTIFUL STAR』はすごくデンジくんっぽいし、そこに気がついて引用する米津さん天才すぎる」
といった声が飛び交っている。
ちなみに、第1話のエンディングテーマはVaundyの「CHAINSAW BLOOD」(22年10月12日配信リリース)だったが、なんとアニメ『チェンソーマン』全12話のエンディングは週替わり。今後、anoやEve、Aimer、Kanaria、syudou、女王蜂、ずっと真夜中でいいのに。、TK from 凛として時雨、TOOBOE、PEOPLE 1、マキシマム ザ ホルモンの楽曲が使われると発表されている。
オープニングムービー
そんな『チェンソーマン』第1話の放送終了直後、MAPPAはYoutube上でノンクレジットオープニングムービーを公開。早くも大反響を呼ぶなか、ところどころに過去の名作映画のシーンのパロディが散りばめられているとしてネット上で話題を呼んでいる。藤本氏ファンの間では、同氏が“映画好き”であることも知られているが、動画を見た映画業界関係者はいう。
「冒頭のほうで赤茶色に染まった空をバックにデンジがポチタを抱きかかえるシーンはトビー・フーパー監督のホラー『悪魔のいけにえ』、暗い林のような中で刃物のようなものを両手に持った2人が左右から井戸に飛び込むシーンは『貞子vs伽椰子』、暴力の魔人がモーテルのベッドに座って靴を脱ぐシーンはコーエン兄弟の『ノーカントリー』、暗い場所でデンジの背後に突然、女性の幽霊のような人影が現れるシーンは中田秀夫監督の『女優霊』、若い男女4人がボーリングをするシーンはコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』、最後のほうで茶色の人影のようなものが躍る場面は『ジョーカー』のなかのシーンを、それぞれモチーフにしているとみて間違いないでしょう。
コーエン兄弟の作品が2本入っているほか、『レザボアドッグス』『パルプフィクション』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』とクエンティン・タランティーノ監督の作品が3本あるのも興味深い。『チェンソーマン』の本編に見られる“むき出しの暴力性”と“血なまぐささ”は、コーエン兄弟とタランティーノの作品から影響を受けていると感じる」
このほかにも、会議室のようなところで黒い服を着た男性4人がコミカルに動くシーンが『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』、チェンソーマンが暴走するシーンが『ファイトクラブ』や『新世紀エヴァンゲリオン』をモチーフにしているのではないかという指摘もネット上ではみられる。
「オマージュされている作品は、どれも映画好きであれば知っている有名作ばかりだが、この『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』という作品は初めて知った。制作者はかなりの映画マニアといってよいのでは」(同)
『チェンソーマン』第1話は、地上波放送後すぐにAmazon Prime Videoでも配信を開始している。このブームに乗り遅れないよう、今のうちにチェックしておいたほうが良いかもしれない。