13年9月中間期(4~9月)の連結決算(米国会計基準)は、最終利益が1693億円の黒字(同6851億円の赤字)だった。08年9月期の1284億円を上回り、中間期としては過去最高を更新し、10年9月期以来3年ぶりに最終黒字を確保した。
売上高は前年同期比1.9%増の3兆7063億円、営業利益は同67.8%増の1465億円だった。前年同期に無配としていた中間配当金は5円とし、2年ぶりに復配する。円安の影響に加え、自動車部品や住宅向けの太陽光パネルなどが好調だった。
●プラズマディスプレイ事業撤退を正式表明
パナソニックは31日の決算発表にあわせて、経営不振の元凶といわれたプラズマディスプレイ事業からの撤退を正式に発表した。今年12月にプラズマディスプレイの生産を終了し、14年3月末で兵庫県尼崎市にある生産拠点を、現在稼動している第4工場を含めて全面的に休止する。これにより、プラズマテレビのほか電子黒板の販売も、13年度の製品をもって終了する。
同社の津賀一宏社長は、「プラズマ事業は1000億円を超える赤字を出した年もあった。現在は赤字を200億円規模まで絞ってきたが、この赤字をさらに半減したり、ましてや黒字転換する方策が見えてこない。これが撤退を最終決断した最大の理由だ」と説明した。
13年9月中間期の部門別損益は、パネル事業を抱えるAVCネットワークスだけが営業赤字だった。売上高は前年同期比9%減の7554億円、営業損益は165億円の赤字(前年同期は132億円の赤字)。パネル事業の赤字は縮小したものの、薄型テレビ、デジタルカメラ、携帯電話が販売不振に陥ったままだ。
テレビ事業の売上は同14%減の1638億円、営業損益は26億円の赤字。携帯電話事業の売り上げは同45%減の261億円に激減し、76億円の営業赤字だった。プラズマ以外にもエアコンやデジタルカメラなど赤字が続く事業をいくつも抱えている。
津賀社長は「赤字脱却が見えない。(赤字の)規模の大きい事業は撤退せざるを得ない。統合したり、BtoB(法人向け)にシフトしたりといった展開も考えられるが、最終的にどうしようもない場合は、今後も撤退することになる」と明言した。
●家電に代わる成長戦略の柱
パナソニックは今年3月に発表した中期経営計画で、16年3月期に営業利益3500億円以上、営業利益率5%以上、フリーキャッシュフロー6000億円以上(3年間の累計)という数値目標を掲げた。家電に代わる成長戦略の柱に据えたのが車載事業と住宅事業だ。19年3月期の売上高はそれぞれ2兆円に伸ばす計画だ。
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ部門は、カーナビ、リチウムイオン電池、高密度基板、電子部品自動実装システムを生産する。13年9月中間期の売上は前年同期比6%増の1兆3559億円、営業利益は同2倍の582億円と大幅な増益となった。顧客である日本メーカーの海外における生産が好調に推移したのに加えて、円安の効果もあった。同部門の売上高は全体の36%を占めて部門別でトップ。営業利益は全社の39%を稼ぐ。
一方、エアコンや冷蔵庫などの白物家電のアプライアンス部門とテレビ、デジカメなどのAVネットワークス部門を合わせた家電の売上高は1兆3658億円。営業利益はテレビやデジカメ、エアコンが足を引っ張り、わずか7億円の黒字にとどまった。
そして、パナソニックが成長戦略のもう1つの柱に据えるのはエコソリューションズ部門だ。リビングステーション、太陽光パネルや空気清浄機、LED電球などを生産。中間決算の売上高は同7%増の8557億円、営業利益は同2.1倍の414億円と好調だった。
収益構造は家電事業から車載や住宅事業に急速な転換が進んでいる。反転攻勢の足場固めは、利益率の高い法人向け事業が中心になる。営業利益率は車載関連部門が4.3%、住宅関連部門は4.8%。これに対して白物家電部門は2.8%。利益率の差は歴然としている。
パナソニックが掲げる「自動車部品で世界のトップ10入り」は可能なのだろうか。同社自動車関連製品はカーナビや音響機器には強みがあるが、今後は走行や安全にかかわる中枢部品を本格的に手がけることになる。そのためには実績のある企業を買収するのが早道であるため、M&A(合併・買収)を強化する。
今年4月、音楽配信サービスを手がける独AUPEO(オービオ)社を買収。車載用の音響機器とセットで自動車メーカーに売り込む。車載用計器メーカーの買収も検討中だ。パナソニックは今や、自動車部品メーカー再編の“台風の目”だ。しかし、自動車担当のアナリストの見方は「自動車部品は家電に比べ格段に顧客の品質要求が高い。シェアを伸ばすのは容易ではない」と見方は厳しい。
パナソニック再建へ向け本格始動した“津賀改革”。そのカギを握る同社の自動車関連事業に、市場の注目が集まっている。
(文=編集部)