道路のアスファルトやガラス、プラスチックなど、身のまわりのモノは何からできているのか。その背景を「地質学」で考えるみると、普段見えるものとは違った世界が見えてくる。
日本の道路にアスファルト舗装が多いワケ
『身のまわりのあんなことを地質学的に考えてみた』(渡邉克晁著、ベレ出版刊)では、サイエンスコミュニケーター、地質・鉱物写真家の渡邉克晁氏が、わかりやすい解説と豊富な写真や図も用いて身のまわりのあんなことやこんなことを地質学的に解説する。
日本の道路は、ほとんどがアスファルトで舗装されているが、このアスファルトは石油に含まれる成分のひとつだ。150度くらいに加熱された状態では黒くて粘り気の強い液体だが、冷えると固まる。
ただし、道路工事で舗装用に使われている黒っぽい材料は、アスファルトそのものではなく、アスファルトの中に骨材となる2cm以下に砕いた砂岩や安山岩などさまざまな種類の砕石や砂を混ぜ込んだもの。
石油からはLPガス、ガソリン、灯油、軽油、重油など、さまざまな石油製品がつくられる。精製前の石油を加熱することで、沸点の異なるいくつかの石油製品に分けていくが、沸点の低いLPガス、ガソリン、灯油などが分離された後には、350度ほどの高温でも気体にならない重い成分が残る。
この重い成分が今度は真空容器の中でさらに沸点ごとに分けられ、重油やアスファルトなどの石油製品ができる。アスファルトは、石油を精製する過程で最後に残る「残り物」といえるものだ。
日本では石油を輸入して国内で石油製品をつくっているため、その過程でアスファルトが大量にできてしまう。それを活用するため、日本の道路はアスファルト舗装が圧倒的に多いというわけだ。
アスファルトと同様、プラスチックも石油でできている身近な材料だ。プラスチックは石油製品のうちのナフサからつくられる材料。沸点でいうと、ガソリンと灯油の中間あたりの成分となる。
ナフサに熱を加えると、分解されてエチレンやプロピレンなどの気体、ベンゼンなどの液体が生成されるが、このままではバラバラに散らばった短い分子でそのままでは利用できない。そこで、バラバラの分子を鎖状に長くつなげてポリエチレンやポリプロピレンなどの固体物質をつくる。これがプラスチックと呼ばれる材料となる。
実は身近にあり、世の中を理解するための一つである地質学。難しそうに思える学問も、身近なものから考えるとその奥深さを楽しめるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。