これに対し鈴木克明取締役は、「AKBがなぜあれほど人気があるのか、という視点から番組づくりをしており、視聴者ニーズも高いので」と答えた。平均視聴率18.7%という高い数字をたたき出しているので、放送事業としては成功なのだろうが、鈴木氏の回答からは”儲かればなんでもいいでしょ”という本心が透けて見えた。
質問大半は動員社員による”やらせ”?
また、一部ネット上などに流れている
「フジHD株主総会では、批判的な質問が出ないよう、同社が動員した株主社員に”やらせ質問”を多く行わせ、時間稼ぎを行っている」との噂についても、探ってみた。
会場の株主から発せられた12の質問のうち、7〜8割が
「なぜ通販事業の業績が良いのですか?」
「視聴率の分析はどのように行うのですか?」
「我が家では、これまで朝は『めざましテレビ』(フジテレビ系)を見ていたのですが、最近チャンネル争いが起きていまして、目を離すと家族が(日本テレビ系の)『ZIP!』に変えてしまうんです。理由は『ZIP!』には嵐がよく出ているからなんですが、これからも時代のトレンドを取り入れた愛される番組をつくってほしいです」
など、当たり障りのないもので占められていた。気になるのは、こうした質問をする株主たちが、そろって30~50代でワイシャツにスラックス、上着はオフィスに置いて手ぶらで来たという格好だ。さらに彼らは塊になって集団で座っている。平日午前10時に、働き盛りの多忙なビジネスマンが株主総会に来るものなのだろうか。
ランチボックスで株主を懐柔
昼12時少し前に、日枝議長が「質疑は尽くされたと思いますので……」と質疑終了を宣言。これに反対する株主たちは、議案への修正動議を行うものの、2時間ちょっとの株主総会は大きな波乱もなく終了した。
日枝議長がこのタイミングで急いで終了したがったのは、おそらく株主に配布する「ランチボックス」が理由だろう。株主には入場時に「お食事引換券」が渡されており、そこには「株主総会議事終了後、ランチボックス1個と交換できます」と書いてある。12時45分過ぎから退席する株主が増えだし、議場外のロビーにはランチボックスをもらうための行列ができていた。
終了時間をちょうどおなかがすく昼食時に設定し、株主の意識をランチボックスに向けることで早く総会を切り上げようとする”したたかな”発想力を、日テレに奪われた視聴率3冠王奪還に向けた番組づくりに生かしてほしいものだ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
<おすすめ記事>
潜入!関電株主総会、副社長トンデモ発言「原発寿命60年」
【株主総会】社長のトンデモ発言で、トヨタに暗雲
日産・ゴーン社長は報酬10億円に一歩届かず。その理由は?