人材確保や社員の定着率の改善はどの会社にとっても課題であり、会社の未来にかかわる重要なテーマである。それは保険業界も例外ではない。もともと、「売れば売っただけ稼げる」という成果報酬型が根づいている保険業界は、必然的に少数の「勝者」と多数の「敗者」を生む。そのため「3年離職率が8割」と、社員定着率の低い業界だった。結果として、多くの保険代理店が人手不足にあえいでいる。
「とにかく稼ぎたい人」が減った日本で保険営業は魅力的な仕事なのか?
この成果報酬型こそが保険業界自体の首を絞めている、とするのが『人材が続々集まる、メキメキ育つ! スゴい保険代理店経営』(パノラボ刊)の著者である稲葉晴一氏だ。稲葉氏は本書で保険業界を取り巻く現状と問題点を解説するとともに、これからの保険代理店経営に必要とされる考え方やシステムを考察している。
そもそも、保険業界は長年、営業マンそれぞれが「どれだけ売ったか」が給与に反映される成果報酬型の給与体系をとる企業が多かった。年収が数千万円に達するようなスター営業マンがいる一方で、まったく売上が立てられず、会社にいづらくなって辞めていく営業マンも多々いる。こういった世界は「稼ぎたい。いい暮らしをしたい」という人材を惹きつけるが、そういう人がどれほどいるのかという問題もある。
「スマホさえあればいい」と言うほど物を欲しがらなくなった若い人たちの間では、「寝食を忘れて働けば2000万円、3000万円も夢じゃない」という保険業界のあり方が魅力的に見えない人が、ますます増えているのではないでしょうか。(P3より)
これまでと同様、「やればやっただけ稼げる」を売りに人を集めようとする限りは、保険業界で働きたい人は減っていく、と本書では指摘されている。
保険業界こそ成果報酬型をやめるべき
また、成果報酬型には様々な弊害もある。その一つが「顧客に合った商品」よりも「代理店が売りたい商品」を優先的に売ってしまう可能性がある点だ。保険商品の中には月々の支払金額も補償内容も大体同等だが、コミッション率(商品を販売した時に営業マンが保険会社から得られる販売手数料の割合)が異なる商品が多々ある。保険代理店が成果報酬型である限り、営業マンがその商品が目の前の顧客に合うかどうかよりも、自分により多くのお金が入ってくる商品を売ろうとしてしまうことが起こりうるのだ。
保険商品の中にはコミッション率が200%というものもあり、こうした商品は常に営業マンを誘惑し続ける。営業マンが悪いわけではない。「顧客に最適な商品をすすめる」というこの仕事で最優先にしなければならないことを、成果報酬型という保険業界のシステムがやりにくくしてしまっているのである。
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本書では保険業界は成果報酬型をやめ、一律型の報酬制度を導入することを提唱し、そのためのマネジメント手法を解説している。インセンティブなしにどのように社員のモチベーションを保つのか。そもそも保険業界に一律型の報酬制度はなじむのか。保険業界の根本を揺さぶる一冊だ。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。