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梅雨、もしチベット高原がなければ「生じない」との検証結果…亜熱帯ジェットの謎

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※画像はイメージ(新刊JPより)。

 関東が梅雨入りし、首都圏では雨が続いています。この時期の日本では当たり前に降る雨ですが、雨はどのように降るのか知っていますか。実は天気や気象の世界には、「へぇぇ!」と思わずうなってしまうような不思議や誰かに話したくなる小ネタがたくさん。

 『よくわかる天気・気象』(日本気象予報士会監修、日本気象予報士会有志グループ著、ユーキャン刊)は気象や天気にまつわる知識を、ユニークなエピソードとともに教えてくれます。

チベット高原がなければ梅雨はなかった?

 じめじめと蒸し暑い梅雨。一カ月以上も雨の多い日が続く日本の梅雨のような気候は、世界的に見ると珍しいのだとか。

 ところで、どうして日本に梅雨があるのか知っていますか? そこには「亜熱帯ジェット」というジェット気流が深くかかわってきます。この亜熱帯ジェットは西から東へ流れます。冬の間は日本列島のはるか南を流れているのですが、暖かくなるとだんだんと北上し、6月の初頭に日本列島を縦断するような経路で流れるようになり、そのまま一カ月ほど停滞します。これが、いわゆる「梅雨前線」と対応するのだそう。その後、南の暖気の勢いが増加すると、亜熱帯ジェットの経路は一気に北に動き、「梅雨明け」となります。

 おもしろいのが、日本の遥か西にある「チベット高原」の存在です。チベット高原は標高5000m級の高原地帯。梅雨の期間中、亜熱帯ジェットはチベット高原にぶつかって二手に分かれ、高原を抜けると再び合流して日本列島に流れ込むという道筋で流れるのですが、コンピューターを使った数値シミュレーションで、チベット高原がないと仮定してシミュレーションすると、梅雨前線は日本列島の付近で停滞することなく、順調に北上し、梅雨はあらわれないそう。

 この時期の日本で雨が続くのには、亜熱帯ジェットだけでなく、チベット高原も深くかかわっているといえそうです。

ストラディバリウスを超えるバイオリンが現在も作られない意外な理由

 気象は人間の文化にも小さからぬ役割を果たしています。バイオリンの名器「ストラディバリウス」は、億単位の値がつくことで有名です。ストラディバリウスは、アントニオ・ストラディバリによってイタリア北部のクレモナで作られていたバイオリンで、現存するのはバイオリン、ヴィオラ、チェロなど約600挺。

 しかし、クレモナでは現在もバイオリンが作られており、製造技術もストラディバリが楽器作りをしていた17世紀と遜色はないのに、ストラディバリウスを超える弦楽器は彼以降生まれていません。これは考えてみると不思議な話です。

 実はこの謎を解明するのに、気象が大きなヒントをくれます。ストラディバリウスは、クレモナの町の北部にあるイタリアアルプスの標高800~1200mに生えている「トウヒ」というマツ科の針葉樹を使って作られていました。このトウヒの材質がストラディバリの時代と今では違っているのではないかという説があるのです。

 気候変動が世界的な話題となることが多い昨今ですが、地球全体の気温は太陽活動や火山の噴火などによって変化します。15世紀から19世紀半ばまでは、現在よりも地球の平均気温は1度ほど低かったそう。この時期を「小氷期」といいます。

 ストラディバリが生きていた17世紀後半は小氷期の中でも太陽活動がもっとも低迷した時期。この寒冷な気候のせいでトウヒの成長が遅くなり、結果として年輪幅が狭く硬い材質になりました。現代のバイオリン製作者の技術がストラディバリと同等でも、今ではストラディバリが使っていたものと同じ材質のトウヒは手に入りません。これが、ストラディバリウスを超える音色のバイオリンが現在も作られない理由とされているのです。

 本書では私たちの生活だけでなく、文化や歴史とも深いかかわりのある「天気」や「気象」について、おもしろいエピソードを交えてわかりやすく解説。身近すぎてあまり関心を向けない天気。本書を読むと空や雲、太陽の見え方が変わるはずです。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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