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ビジネスを大きく左右する「最強のビジネス会食・攻略マニュアル」…損得勘定は禁物

構成=小野貴史/経済ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 コロナ禍で激減した取引先との会食需要はまだ回復基調に入っていないようだが、対面の機会が増えれば取引先との飲食の機会も発生する。その機会を有効に活用して、取引の発展に結びつけられるかどうか。広告会社出身のyuuuさん(Twitterアカウント名:ad_career28)は、これまでの幾多の会食の経験をもとに、note上に『若手のうちに絶対身に着けたい「ビジネス会食完全攻略マニュアル』を公開し、話題を呼んでいる。そこに書かれた法則や会食の神髄について、yuuuさんに聞いた。

人の感情がビジネスをドライブする源泉                             

――かなり前から取引先との会食の機会は減っている印象がありますが、今でも大切な手段なのでしょうか。

yuuu 会食は目的達成の手段のひとつとして捉えればよいと思います。昔は会食文化があって、会食を通じて仕事を取ってきたり、仕事を進めたりするケースがありました。今の時代でもその文化がないわけではありませんが、今は懇意になるツールが増えてきました。例えば趣味のサウナに一緒に行くとか、スポーツをするとか、ツールが多様化しています。会食は引き続き有力なツールですが、誰もが会食スキルを身につけるべきだとは捉えていません。自分が会食の領域で存在価値を高めていけると思うのなら会食スキルを伸ばして、そうでなければ別の領域でクライアントと信頼関係を構築すればよいと思います。

――業務以外での付き合いは必要というお考えでしょうか。

yuuu 必要だと思います。法人が法人として物事を動かす時には2つの観点があると思います。例えばA社がB社に何かを提案した場合、ひとつは、その提案が法人の利益にかなうかどうか。すなわちROI(投資利益率)を見込めるかどうかですが、法人として意思決定する以上は必ず必要な観点です。もうひとつは、その提案が個人の利益にかなうかどうか。法人にはメリットがあっても、個人にはポジティブな場合とネガティブな場合があります。

――個人の利益とは、人事評価を上げられるということですか?

yuuu それもひとつです。会食やビジネス外の付き合いは個人の利益に資する行動として、今でも価値があると思っています。何か提案をした時に「この人は信頼できるので、一緒に仕事がしたい」と受け止めてもらえるような、ROI以外の価値が確実にあります。

――自分の味方をつくるわけですね。

yuuu そうです。自分に対して最後までサポートしてくれて、ハシゴを外すようなことはしないという関係を築くことで、それがひいては人事評価にもつながるという考え方です。ROIが明確であればビジネスが動くと考えていらっしゃる方もおりますが、決してそうではありません。費用対効果だけで決まるほどビジネスは単純ではなく、いまだに人の感情がビジネスをドライブする源泉になっていると思います。

――昔の会食は信頼関係づくりよりも、むしろ損得勘定が勝っていたと思いますが、今は変わってきていると理解してよいのでしょうか。

yuuu 私の書いた「ビジネス会食完全マニュアル」について「それって、接待でしょ?」という意見もありますが、接待と会食には明確な違いがあると考えております。接待は場を設けること自体に貸しをつくる行為、例えば高級店や夜の店に連れていくことを主としております。他方、会食はお互いに「あなたのことを真剣に考えて、一緒にビジネスをしたい」「目的を達成するために、あなたは私にとってこれだけ大切な人である」という気持ちを間接的に伝える行為です。

――すると、会食スキルをあまり軽く考えないほうがいいですね?

yuuu そうです。私は新卒1年目から2年目にかけて、謙遜でも何でもなく、まったく仕事のできない社員で、クライアントとの関係が築けず、社内でも怒られてばかりいました。社内で一番価値がないといわれた伝書鳩のような仕事しかできなかったのです。その時期に、上司から「お前は何もできないんだから、会食ぐらい自分で仕切れよ」と言われ、まず会食の仕切りからがんばろうと思って、いろいろと考えて仕切るようになりました。場数を踏んだ結果、信頼関係を構築できなかったクライアントと関係を構築できて、ビジネスを進められるようになりました。「こいつは仕事のスキルはまだまだだけど、相手のことを思って真剣に動いてくれている」と感じていただけて、仕事が上手く進むようになったのです。仕事の出来が良くない人ほど、会食の仕切りに強みを見出すと最終的に仕事につながると思います。

お互いに解決できる仲間になることが目的

――会食を行う時期は、契約のアプローチをする段階、契約が決まった段階、取引の途中段階、終了段階など、どのタイミングがふさわしいのでしょうか。

yuuu 会食は人間関係をより深めるための手段なので、初期段階で設定すると「こいつらは貸しを作ろうしているのか?」「会食の場で何か仕掛けてくるのか?」「人間関係だけで丸め込もうとしているのか?」と見られてしまいがちです。一定程度ビジネスが進んで関係性ができた時が、最初のタイミングです。何かしらハードな交渉が発生しそうな前で、お互いに腹を割って「ぶっちゃけ、どうなの?」と言い合える関係をつくることを目的とする場合が多かったです。それから、これから大きなトラブルが発生することが予期できるタイミングです。トラブルが起きた時に、お互いに解決できる仲間になることを目的としていたパターンもありました。

――プロモーションだけでなく、リスクマネジメントの目的もあるわけですか。

yuuu そうです。ただ、リスクが生じていることを相手に勘付かれてはダメで、相手側に明確な意図を察知されないタイミングが大事です。意図を察知されたら会食自体がなくなる場合もありますので。

――店を選ぶ場合、エリアの選定はどう考えればよいのでしょう? 先方のオフィスから移動しやすいエリアとか、先方の帰宅に便利なエリアとか、いくつかの基準があると思います。

yuuu 正解はありません。会食相手が複数の場合、帰宅に便利なエリアは、Aさんにとって便利ならBさんにとっては逆方向で不便になりがちです。オフィスからの移動を考慮したほうがよいでしょう。無難なエリアとしては日系企業が集積している神田から新橋にかけてのエリア、会食相手がスタートアップ企業なら渋谷に所在することが多いので、渋谷、恵比寿、青山エリアなどがよいと思います。

――メニューはコースとアラカルトのどちらを選んだほうがよいのですか。

yuuu 難しい問題です。相手がどれだけ酒を飲むかにもよりますが、会食費用を予算の範囲内に収めるには、飲み放題付のコースを選んだほうがよいといえます。いまどき日系大手企業でも、会食予算は参加者1人あたり8000円程度です。アラカルトを選んで、仮に会食相手がワインリストを見てボトル1本をオーダーすれば、それだけで1万5000円以上がかかってしまうかもしれません。こちら側の同席者に社長や役員など予算の裁量権を持った人がいれば対処できますが、同席者が中間管理職の場合、そうはいきません。その中間管理職が身銭を切る事態になってしまいます。若い人は自分よりも上司のほうが自由に使える金を持っていると思っていますが、現実は逆です。上司のほうが使える金を持っていないのです。

――子供の教育費と住宅ローンを抱えていれば、おおむね可処分所得は低くなります。

yuuu そういう上司の小遣いは月3万円かもしれません。会食で身銭を切れるような経済力は持っていません。したがって予算オーバーを防げる飲み放題付のコースを選んだほうが安全です。

手土産に単に有名ブランドの品を渡すことはNG

――夜の会食を一次会でお開きにするのが、二次会まで開いてタクシーを手配するのか、その区別はどう考えればよいのでしょうか。

yuuu 例えば相手側に小さなお子さんがいらっしゃるとか、遠方から通勤されているなどの情報を得ているとか、過去の会食で一次会で終えることが多かった場合は、一次会で終えるという仮説を立てて、同時にプランBも用意しておきます。相手側が「今日はもっと飲みたい気分だね」と言い出すかもしれないので、二次会の店を「もしかしたら行くかもしれない」と仮予約を入れておくのです。予算の問題もあるので、二次会に流れる可能性もある時には、一次会の予算を減らしておくことが大切です。

――二次会でスナックに行くと、誰かが「一人一曲!」と言い出して、無理やり歌わされることが少なくありません。それが非常に苦痛な場合、カラオケのない店を選ぶなど防衛策は考えられますか。

yuuu きわめて悩ましい問題です。確かにカラオケの嫌な人は結構います。ただ、会食相手の上席者がカラオケを好むことをわかっていたら、上司への相談次第ですが、相手によってはカラオケのある店を選ぶように指示されるのではないでしょうか。「下手でもいいから歌えよ」と言われたら「歌えません」とは言いにくいでしょうから、一曲だけ何とか歌える曲を準備しておくことが、現実的な対応策だと思います。

 これは例外的な事例ですが、会食の日はカバンの中に必ずリコーダーを入れておいて、二次会で歌わざるを得ない場面になったら「自分はリコーダー専門です」と言って一曲演奏する人がいるそうです。「こいつ、持っていったな」とインパクト付けをして、歌わずに二次会を乗り切っていると聞きました。

――手土産については、慣行として用意したほうがよいのか。それとも仰々しくなるので、そこまでの必要はないと考えてよいのでしょうか。

yuuu  ケース・バイ・ケースでしょうね。例えばお子さんが受験を控えていることを知っていたら、太宰府天満宮の御守りを調達して手渡せば500円で済みます。しかし「自分の子供の受験を考えて手土産に御守りをくれた」と思われれば、1万円の手土産を渡すよりも相手の心は動きます。あるいは奥さんがリラックスできるグッズを手渡すとか、料金の多寡ではなく、相手のシチュエーションに想像を働かせて、相手を思っていることを伝える品を選ぶことです。

――手土産の定番になっているような有名ブランドのお菓子は、あまりふさわしくないのですね?

yuuu 単に有名ブランドの品を渡すことは、一番良くないパターンです。ただ何かを渡すだけというのなら、「貸しをつくろうとしているな」と勘繰られてしまうので、むしろ渡さないほうがいいのです。菓子折りなら「これは自分が昔から通っている店のもので、ぜひ食べていただきたい」というように物語を添えられる品がふさわしいと思います。

相手にどう思われるかが全て

――yuuuさんが会食で失敗した経験があれば聞かせてください。

yuuu クライアントの担当幹部が異動するので送別会を開いた時の経験です。上司に「壮大にやろう。お前は二次会の装飾をゴージャスにやれ」と指示されたので、DIYショップでいろいろなグッズを買って、二次会の店内を装飾しました。ところが、その幹部も上司もブチ切れてしまったのです。

――どうして2人がブチ切れたのですか?

yuuu 装飾のクオリティーが低かったのです。「こんなショボい装飾で俺の送別会をやるのか!」と。その時は良かれと思って、自腹も切って装飾したのに、なぜ怒られなければならないのか? と思いましたが、よくよく考えると、自分がどうしたかではなく相手にどう思われるかが全てなのです。そこに価値を提供できなれば、自分の努力は何の意味もありません。

――最初から何もしなかったほうがよかったですね。

yuuu  あの店なら、わざわざグッズを買って装飾する必要はありませんでした。装飾をするのならアウトプットを上司に提示して、コンセンサスを取っておくべきでした。仮に上手くいかなくても、言い方は悪いですが、上司の責任になるわけです。上司と共犯関係になることは結構大事です。

――会食にはリスクもありますね。

yuuu あります。相手に警戒心を持たれたり、貸し借りの関係を感じさせたりしまうことだけでなく、地雷を踏んでしまうリスクもあります。

――地雷を踏むとはどんなことですか?

yuuu 酒を飲むと気が緩んでしまいがちで、会食相手の競合先に関するネガティブ情報を口にしまうことや、こちらの社内情報を迂闊に話してしまうことです。酒の勢いとはいえ、口が軽いと信用をなくします。それから相手が愚痴をこぼしたり、先方の社内批判をしたりした場合、決して同調しないこと。同調すると、こちらがそういう発言をしたと吹聴されかねません。

――会食の場で取引に関わるお願いごとをするのも、場違いな行為ではないでしょうか。

yuuu 店を出てからも含めて、会食の場でビジネスの話をしてはいけません。とくにお願いごとをしたり、相手の意思決定権者を聞き出したりすることはタブーです。後日のビジネスを円滑に進めるための関係づくりが会食です。仮に相手が「これこれしかじかのことを求めているのだろう?」とこちらの意図を突いてきたら、「その件について日を改めて相談させてください」と伝えておけばよいのです。

――会食は戦略的な行為ですね。

yuuu そうです。会食は戦略です。一部始終気を抜けないのがビジネスの会食です。さらに戦略である以上、会食にともなうコストパフォーマンスも考えなければなりません。設定した時と設定しない時では何が違うのか、利益インパクトを上回る成果を残せるかを明確にして設定すべきで、明確にできない時は設定すべきではありません。

 自分から会食を企画したい場合は、上司に対して「この案件がこんな現状なので、円滑に進めるために会食を設定したいと思う。案件が上手くいくかどうかは確証を持てないが、上手くいけば、これだけの売り上げが上がり、これだけの利益を得られるので、この予算で会食を開きたい」と申し出るのです。

――まるでフィージビリティスタディですね?

yuuu フィージビリティスタディと同じです。ROIの観点から、いくら投資して、いくらの利益を上げるというシナリオを明確にすることが、会食を設定する前提です。

会食に誘われる側の心得

――yuuuさんが作成されたマニュアルの内容はかなり高度ですが、もっと簡単に会食のポイントを把握する方法はないでしょうか。

yuuu 前提として、あのマニュアルを全て実行する必要はありません。私も実行できないことがあります。ポイントは自分なりの判断基準をもって、上司とコンセンサスを取ることです。コンセンサスを取っておけば上手くいく確率が上がりますし、上司も適切なフィードバックができるようになります。

――会食に誘われる側の心得も教えてください。例えば貸し借りの関係を作らないために「会社の規定で費用は折半させてもらう」と前もって伝えておく方法もあります。

yuuu 会社の規定を理由に示すことはアリだと思います。実際、折半を原則にして、どちらかの費用負担で会食に誘うことも、誘いに応じることも、いずれも禁止している会社はあります。また、相手側の意図を察知したうえで、会食を経ていろいろ要求されるのは困る場合は断ったり、あいまいにリスケジュールをしたりする方法があると思います。

 会食への対応では貸し借りの関係をチャラにすることも大事で、何となく手土産を持ってくるなと感じたら、こちらもお返しの手土産を持参するとか。あるいは一次会の費用を先方が負担したら、二次会の費用はこちらで負担するとか、一次会も二次会も先方が負担したら、次回の会食はこちらで設定して費用も負担するとか。対等で健全な関係を築いておくことが、誘われた側のリテラシーです。

――今日はたいへん詳細なお話をありがとうございました。

(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)

小野貴史/経済ジャーナリスト

小野貴史/経済ジャーナリスト

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表
著書「経営者5千人のインタビューでわかった成功する会社の新原則」

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