2023年5月7日、あるTwitterユーザーのツイートが注目を集めた。それは、首都高速道路中央環状線の山手トンネル内で、サカイ引越センターの配送トラックが目の前で追突事故を起こすという、衝撃的なドライブレコーダーの映像だったからだ。実は5月20日にも、ほぼ同じ場所でサカイのトラックは追突事故を起こしている。
【ドラレコから学ぶGWサバイバル】
— SKZY@のほほん電気工事士 (@SKZY14) May 6, 2023
GW最終日の高速道路は渋滞がつきもの。
渋滞の最後尾ってハザードを点灯してる?
どのタイミングで点灯?
停止してから?
映像は帰宅ラッシュ渋滞最後尾でおきたもの。自車の前のトラックがナビ操作による前方不注意で追突。
早めのハザードで身を守ろう。 pic.twitter.com/v5qEmenuHJ
5月7日のツイートにある事故発生は2月16日の模様。画像から場所を特定したところ、内回り中野長者橋出口の手前、20.1キロポスト。東京メトロ落合駅の真下辺りである。
“エスコートライト”とは、道路が緩い上り坂になっている場所で、ドライバーが上り坂に気付かず減速し、それが積み重なり渋滞が発生するのを防止するための設備。道路の両脇に青緑色のLEDライトが一定間隔で配置され、それらが自動車の走行目標速度よりやや速い速度で前方へ流れるように点滅移動する。ドライバーはその光の流れに視覚的につられてアクセルを踏み、速度を上げることを狙っている。
この動画の事故も場合、渋滞最後尾より手前に「この先渋滞」の電光掲示板が出ているにもかかわらず、エスコートライトは通常通りに点滅し、より速度を増加させるような働きをしている。運転の注意義務はドライバーにあるものの、エスコートライトが事故を誘発する一因になったと考えられ、首都高速道路株式会社にも一定の瑕疵があったのではないかと考えられる。
今後は、渋滞発生時にエスコートライトを別の作動パターン、例えば、全体が点滅のパターンに変更するなどの対策を取ってもらいたいところだ。
また、5月20日夕方にも内回り中野付近で、原因は不明だがサカイのトラックが追突事故するようなかたちで事故が発生している。さらに6月25日夜、「内回り五反田」でもサカイのクルマが事故を起こしている。
これらの事故に関して、Business Journal編集部からサカイへ経緯説明を求めるメール文書を送付したが、現時点でまだ回答は得られていない。
一方、話題になったTwitterの件以外にも、ネット上ではサカイのクルマが衝突事故をよく起こしているという指摘もある。そこで今回は、物流業界事情に詳しいジャーナリストに、サカイ、そして引越し業界全体に潜む危険運転の遠因となりうる問題について分析してもらった。
トンネルでの追突事故…居眠り、よそ見、ながら運転が原因か
まず、冒頭の山手トンネルで起きた事故はどんなものだったのか、ツイートの映像を見たうえでに解説してもらおう。
「事故映像は、サカイのトラックの後ろを走る自動車のドライブレコーダーに記録されていたものです。映像を見ると、サカイのトラックはそこまで速度を出しているようには見えず、一見すると普通に走っているようです。ですが、手前の電光掲示板に表示される『この先渋滞注意』の表記を見ても減速する様子がなく、突如としてブレーキランプが点灯し、次の瞬間には前を走るクルマに追突してしまっています。ノーブレーキではなかったのでしょうが、渋滞に気付くのに遅れ、減速が間に合わず追突したのでしょう」
過失はサカイ側にあるようだが、この事故の原因はなんだったと考えられるのだろう。
「映像だけでは事故の詳細がわからないので直接的な原因は不明ですが、先の事故状況から、居眠り運転、よそ見運転、ながら運転のいずれかだったと推察できます。なんにせよ、明らかな前方不注意による事故だということですね」(同)
今回の事故と直接関係があるかどうかは別として、サカイを含む引越業というものは、こうした追突事故を引き起こしやすい側面が少なからずあるという。かつてサカイでも働いた経験があり、現在は別の引越業者に従事する業界関係者に話を聞いた。
「引越し作業というのは、重たい冷蔵庫やタンスなどを運びながら階段を何度も上り下りする相当な重労働です。そうやって1日何カ所も回るうちに体力は消耗しますし、その合間にコンビニなどで昼食をとるわけですが、食事後は強烈な眠気に襲われることもよくあります。
さらに、複数の引越業者で働いた経験から、サカイは仕事を急がされる傾向がありました。たとえば、荷物の搬出・搬入をする際、重い荷物を持っていても『走れ、走れ』と急かされました。サカイでは午前1件、午後2件の引越しをこなすことは普通で、多いときには4~5件ということもあります。他社に比べて1件当たりの引越しにかかる時間は短いと思います。
そのうえ繁忙期になると、午後5時や6時から引越しを始めるケースもあり、自分たちの担当する引越しが終わっても、近くで作業が終わっていないチームがあれば応援に駆け付けることもよくあります。そのため、作業が終わるのが深夜に及ぶことも珍しくありません」
また、ドライバーと引越し作業員が兼任されている要素から、別の問題も考えられるという。
「疲れた状態で運転をしなければならないので、サカイに限らず引越業界全体の問題として事故を起こしやすい要因が考えられるため、常に細心の注意を払って運転に臨む必要はあるでしょう。特に夕方以降は眠気との戦いが避けられません。
一般的な長距離物流ドライバーと比べると、引越会社のドライバーはそこまで運転のプロフェッショナルではない場合もあります。サカイでは基本的に社員しか運転していませんが、一部の引越し業者では、運転免許を持っていれば学生のアルバイトにもトラックを運転させているところもあります。実際に私も学生のころにある業者でトラックを運転したことがあります。
学生バイトではないとしても、引越し作業をガンガンこなせる、若く体力のある人が採用されやすい業種ですから、運転経験がそこまで豊富でなくとも、運転免許さえあればトラックの運転に駆り出されるケースもあるでしょう。そうすると、事故が発生するリスクは必然的に上がるといえます」(同)
指導監督違反が相次いでいるサカイ、研修制度を見直すべき?
サカイといえば、近年だけでも、いくつもの事件が明るみになっている。
2017年にサカイの北大阪支社の駐車場にて、アルバイトの男性が同社の社員を正座させてビンタしたうえ、レンガを投げつけたという暴力事件。2022年10月には、営業担当の社員が引越し見積もりのために訪れた会社員男性宅で、28万円相当の腕時計1本を盗んだという窃盗事件。
このような不祥事が相次いでいるため、社員教育が徹底されていないのではと糾弾されることも少なくない。事件を起こしてしまうような教育体制が、自動車事故の遠因になっている可能性はないのだろうか。
「サカイで運送に関してどのような教育・研修を行っているのかが定かではないので断定的なことは言えませんが、その指導に関して疑問を抱いてしまういくつかの要素は確かにあります。国土交通省のサイトには、過去5年間の自動車運送事業者に対する行政処分情報を検索できるページがあるのですが、そこで“引越”と検索をかけてヒットした24件のうち、サカイだけでなんと10件もの行政処分が下されていることがわかります。そしてそのうちの8件に“運転者に対する指導監督違反”という項目が含まれているのです」(前出ジャーナリスト)
“運転者に対する指導監督違反”とは、「貨物自動車運送事業者は運転者に対する適切な指導および監督をしなければならない。そしてその日時・場所および内容、並びに指導および監督を行った者、そして受けた者を記録して、その記録を営業所において3年間保存しなければならない」という法律である。主に駐車違反などを繰り返したことが原因で、その指導力不足を指摘されているようだ。
(文=A4studio)