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「ビッグモーター退職者は就職先がない」があり得ない理由…だが元管理職は絶望的

文=Business Journal編集部、協力=川畑翔太郎/UZUZ専務取締役
「ビッグモーター退職者は就職先がない」があり得ない理由…だが元管理職は絶望的の画像1
ビッグモーターのHPより

 自動車保険の保険金水増し請求問題に揺れる中古車販売大手ビッグモーター。社内では幹部から店長、店長から現場社員への壮絶なパワハラ行為とノルマ達成のための悪質行為の強要が常態化しており、保険金問題の発覚も影響して1月以降、退職者が続出しているともいわれている。一方、同社では組織ぐるみの不正・不適切行為が行われていたため、退職者は「元ビッグモーター社員」という経歴が災いして新たな就職先を見つけるのが難しくなるという見方もあるが、実態はどうなのか――。

 昨年に不正が発覚して以降、沈黙を守っていたビッグモーター経営陣は先月25日、騒動後初となる会見を実施。それから2週間が経過したが、同社内で行われていたパワハラや不正行為に関する報道はあとを絶たない。たとえば、一部の修理工場では顧客から車検で預かった車両について替える必要のない部品を見積もりに計上し、その部品を交換しないまま車両を顧客に返却し、新品の部品を転売(9日付「FNNプライムオンライン」記事より)。中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という信じがたい行為まで横行していたという(別の9日付「FNN」記事より)。また、8日付「FRIDAY DIGITAL」記事は、毎年大量に採用する新入社員に半ば強制的にビッグモーターで車を購入させ、金利9.9%・120回ローンなどのローンを組ませ、自社で扱う任意保険にも加入させることで、多額の手数料収入を得ていたと報じている。

 一連の不正の影響は広い範囲におよんでいる。すでに国交省は路運送車両法に基づきビッグモーターへの立ち入り検査を始めているが、同社に出向者を送り込むなど関係が深かった損害保険ジャパンに対して、金融庁は行政処分の発令も視野に調査を開始。損保ジャパンに加え三井住友海上保険と東京海上日動火災保険は、ビッグモーターとの保険代理店の委託契約を終了させる方針を示している。

 9日には、中古車検索サイト「カーセンサー」(リクルート)が、ビッグモーターが扱う車両情報の掲載を停止。信販会社の間では、ビッグモーターからの自動車ローンの新規受け付けを停止する動きも出始めている。

「すでに車両修理の新規受け付けは停止しており、ビッグモーターで中古車を売買する人は激減し、国土交通省から民間車検場の指定取り消しや一定期間の事業停止などの行政処分が下される可能性も高い。取引先の銀行団に借入金の借り換えを要請していると伝えられているが、銀行としてはコンプライアンスの観点から、組織ぐるみで違法行為をしていた可能性のある企業に融資というかたちで資金を提供してよいのかという問題もあり、遠くないうちにビッグモーターの資金繰りが行き詰まるとの見方が強い。

 一方、ビッグモーターは全国に多くの店舗や修理工場、中古車の在庫など豊富な資産を抱えており、これを魅力的だと評価する企業やファンドが出てくるかもしれない。なので、他社による事実上の買収で社名も経営陣も一新し、存続していくというのが現実なところではないか。

 その場合にネックになるのが、株の問題。ビッグモーターは兼重宏行前社長と息子の兼重宏一副社長が株主となっている資産管理会社の100%子会社であり、現在も名実ともに兼重氏が同社の経営権を握っている。兼重氏が全株を手放さない限り、救済する企業は現れないだろう」(全国紙記者)

「元ビッグモーター社員」の肩書は無関係

 一連の不祥事をめぐり注目されているのが、退職者の動向だ。7月20日付「日刊自動車新聞 電子版」記事は、1~3月の間に約1000人の社員が退社したと報じており、和泉伸二社長は先月26日、経営陣が謝罪会見を行った同25日から退職者が6人出たとして「もう少しあるかと思っていた。会社が生まれ変わる期待を持っていただいていると思いたい」と語っていた。

「ビッグモーターを退職し、中古車業界に嫌気がさして別の業界に転職する人が相次いでいる」(中古車業界関係者)

 同社は組織ぐるみで不正をしていたため、退職した元社員は採用してくれる新たな就職先を見つけるのが難しいのではないかという声もみられるが、主に20代のキャリア支援を行う株式会社UZUZの専務取締役、川畑翔太郎氏はいう。

「所属していたのが不正を行っていた修理部門ではなく、かつ管理職ではなかった場合、ビッグモーター出身であることが転職活動にマイナスの影響を与えるとは考えにくく、むしろプラスに働く可能性もあります。日本の企業には、いまだに転職に対してネガティブな印象を持つ風潮があり、面接でも『なぜ転職するのか?』という点を聞かれますが、今ビッグモーターを辞めて転職活動をする人は、その点を改めて説明する必要はなく、理解が得やすい。志望先の企業から『大変だったね』と同情を得られることもあるでしょう。

 また、就職面接では『アイスブレイク』といって、面接官と志望者の間の緊張が解けると志望者にとっては有利になりますが、元ビッグモーター社員という『避けては通れない話題』は、アイスブレイクの観点だけで見ればプラスにもなり得るでしょう」

 では、不正が行われていた修理部門にいた場合はどうか。

「職務経歴者でも面接でも志望者が企業に虚偽の内容を伝えることは許されないので、もし不正に関与した経験があるのなら、『納得しないまま会社の指示でやってしまったことを非常に反省している』『もう今後は真っ当な仕事をしたいので御社を志望している』と正直に話せば、マイナスの評価をされることはあまりないと思います」(川畑氏)

 一方、店長や部長など管理職だった場合、転職活動は厳しいものになるという。

「ビッグモーターは、幹部をはじめとする管理職による現場社員へのパワハラや不正行為の強要によって売上を上げるという企業体質だったことが明らかになっており、どうしても『そういうことをやって出世した』というイメージを抱かれるので、同社の元管理職の方が『私はやっていなかった』と言っても、信じてもらうのは難しいでしょう」

 また、中堅IT企業役員はいう。

「管理職を除いて、ビッグモーターの元社員だからという理由で転職活動で不利になるということはない。同社はかなりノルマがキツかったので、そこで3年なり4年なり続いていたというのは、ポテンシャルが高くメンタルが強いと評価される。同社は採用時に学歴や経歴を問わず、いろいろなタイプの社員がいると思われ、結局、転職がうまくいくかどうかはその人次第。個々人の志望先企業が求めるスキル・能力とのマッチング、人柄、企業との相性次第ということ」

 和泉社長は先月25日の謝罪会見当日、全社員向けに「全員の力を結集し、お客様満足を追求していけば必ず強いビッグモーターに戻ることができる」などと書かれたメールを送付しており、会社は社員の引き留めに躍起になっている様子がうかがえる。

「これだけビッグモーターのヤバい体質が白日の下に晒され、それを主導していた管理職、特に役員は会社が潰れれば再就職は難しく、なんとしても会社を潰さずに存続させなければならず、さもなければ会社と心中するほかない。末端の社員たちは、そんな役員たちの保身に付き合って泥船に乗り続ける必要はまったくなく、さっさと退職して新たなキャリアをスタートさせるべきだ。世の中には不正なんかしなくても、ちゃんと利益を上げている会社、不正とは無縁の職種がごまんとある。不正を強いられる仕事をやり続けるというのは、やはり人として苦しいもの。特にビッグモーターの若い社員にとっては、今回の不祥事はキャリアを転換させる好機といえる」

 ちなみに1月に特別調査委員会が設置されてから現在までの間に同社を退職した人の数について同社に問い合わせたところ、「退職者の人数につきましては、従来から公表しておりませんので回答を控えさせていただきます」とのことであった。

(文=Business Journal編集部、協力=川畑翔太郎/UZUZ専務取締役)

川畑翔太郎/株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役

川畑翔太郎/株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役

1986年生まれ。株式会社UZUZ
COLLEGE(https://uzuz-college.jp/)代表取締役、UZUZグループ専務取締役。鹿児島出身で高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻し、住宅設備メーカーINAX(現:LIXIL)に入社。1年目から商品開発に携わるも、3年目に製造へ異動。毎日ロボットと作業スピードを競い合う日々を送る。自身のキャリアチェンジのため、UZUZ創業に参画。これまでに累計2,000名以上の就業サポートを実施。IT分野の教育研修サービス「ウズウズカレッジ」だけでなく、自治体の公共事業受託、企業ブランディングを担当。IT分野のリスキリングは「ウズウズカレッジ」をご活用ください。
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UZUZホールディングス

Twitter:@kawabata_career

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