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佳境迎えるNHK会長後任人事の舞台裏〜透ける首相官邸の意向と、三井物産のトラウマ

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佳境迎えるNHK会長後任人事の舞台裏〜透ける首相官邸の意向と、三井物産のトラウマの画像1NHK放送センター本部
「Wikipedia」より/Rs1421)
 来年1月24日に任期が切れるNHKの松本正之会長(69)の後任候補に、日本ユニシスの前社長で現特別顧問の籾井勝人氏(70)が浮上している。

 会長の任命権を持つNHK経営委員会(浜田健一郎委員長)には籾井氏を含めて4人程度の候補が推薦されており、12月24日の会合で正式に決められる見通しとなっている。籾井氏の推薦には、首相官邸サイドの意向が反映されているという。

 籾井氏は麻生太郎副総裁兼財務相のお膝元である福岡県山田市(現嘉麻市)の生まれであり、首相官邸と“九州人脈”でつながっている。安倍晋三首相の有力な経済ブレーンである古森重隆・富士フイルムホールディングス会長(74)も長崎県立長崎西高校から東京大学経済学部に進んだ長崎県人であり、九州財界と官邸をつなぐ世話役として知られ、安倍第1次内閣当時にNHK経営委員長を務めている。古森氏がNHK経営委員長時代にNHK会長に任命した福地茂雄・アサヒグループホールディングス相談役(79)も九州の福岡県戸畑市(現北九州市)の生まれ。その古森氏が、安倍首相に同じ九州人脈の籾井氏をNHK次期会長に推薦したというのが大方の見方だ。

 籾井氏は九州大学卒業後、三井物産に入社。鉄鋼部門を中心に歩んできた。社長の登竜門といわれる米国三井物産社長を務め、三井物産次期社長の有力候補に目されたこともあったが、2005年6月、副社長を最後に日本ユニシス社長に転出した。かつて三井物産の本流だった鉄鋼部門が産業構造の変化で衰退した影響が大きかったが、実力者の籾井氏が社長になることを警戒して、当時の経営トップが米ユニシスとの合弁会社としてスタートした日本ユニシスに転出させたといわれている。ちなみに日本ユニシスは、12年に大日本印刷が筆頭株主(発行済み株式の18.9%を保有)になっており、三井物産色は薄れた。

●NHK会長ポストをめぐる三井物産のトラウマ

 実はNHK会長ポストをめぐり、過去に三井物産は苦い経験をしている。三井物産の社長・会長を務めた故・池田芳蔵氏が1988年7月、初の財界出身者としてNHK会長に就任したが、わずか9カ月で辞任に追い込まれた。池田氏は会長に就任した時点ですでに77歳。国会に呼ばれ、いきなり英語で話し始めたり、支離滅裂な日本語で答弁したりしたため、会長には不適任との烙印を押され、退陣を余儀なくされた。当時、池田氏辞任に関するメディアの取材合戦が過熱して、池田邸に侵入した全国紙記者が飼い犬に足をかまれてケガをするという事件も話題を呼んだ。

 三井物産の有力な社長候補が日本ユニシスに転出したのは、籾井氏が初めてではない。

 2002年7月3日、国後島など3島のディーゼル発電施設をめぐる偽計業務妨害事件で三井物産社員3人が逮捕された。翌4日、東京地検は160人の係官を動員して同社本社の家宅捜索を行い、23〜24階の役員フロアでは会長、社長、担当役員のメールまで根こそぎ押収した。同社が捜査に非協力的であったため、本社の家宅捜索に発展したわけだが、それも影響して、同年9月4日、清水慎次郎社長と上島重二会長は辞任発表に追い込まれる事態となった。その上島が社長時代、島田精一副社長など力を持った役員が揃っていたが、上島氏は院政を敷くために後任に清水氏を社長に指名し、島田氏は日本ユニシスの社長に転出させられていた。清水社長の引責辞任を受けて専務の槍田松瑩氏が社長に昇格したが、この槍田氏が島田氏の例にならい、籾井氏を日本ユニシスに転出させた。

 こうした過去から、今回もし籾井氏がNHK会長になれば、三井物産にとっても籾井氏にとっても名誉挽回となるといえよう。

 12月10日夜の7時8分。東京・南麻布の日本料理店「有栖川清水」で安倍首相は葛西、古森、佃和夫・三菱重工相談役、中西宏明・日立製作所社長、小島順彦・三菱商事会長など、安倍を応援する財界人と会っているが、この席でNHK会長人事が話題になったのではないかといわれている。

 日本ユニシス関係者の話によると、籾井氏が同社社長を辞めたのは引責辞任だという。籾井氏は同社の業績が低迷して引導を渡された。11年3月期の売り上げはピーク時の25%減の2529億円、営業利益は70%減の58億円に落ち込み、利益水準のピーク時の3分の1になったが、実際のマイナス幅はもっと大きかった。米ユニシスとの資本関係の解消などによって、売り上げで数百億円、営業利益で100億円の嵩上げがなされて、この数字だった。籾井氏は10年度に売り上げ5000億円、営業利益300億円の計画をぶち上げたが、惨たんたる結果に終わり、「三井物産出身者でない社長」でないと再生は不可能との結論に達し、プロパーの黒川茂が11年6月に社長になった。

 ある日本ユニシス幹部は「経営陣と現場の考え方にギャップがあり、事業構造の転換の波に乗り遅れた」と指摘する。クラウド事業に出遅れたことと顧客満足度の低下がその表れだという。

 日本ユニシスでは業績を上げることができなかった籾井氏が、果たしてNHKの経営の舵取りを担うことができるのか。関係者の間では、もし籾井氏が会長に就任すれば、「安部政権の意向の“オウム返し”に終始することになるのでは」との懸念が早くも広がっている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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