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住宅販売の営業職、過酷すぎて9日で退職…年収2千万円も、24時まで残業?

文=福永太郎/編集者・ライター、協力=菊原智明/営業コンサルタント
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「gettyimages」より

 きつい仕事というイメージが強い住宅メーカーの販売の営業職。少し前には「年収1000万円も実現可能」という文言に惹かれ未経験で転職したところ、あまりの厳しさに勤務日数9日で退職したという投稿が一部で話題になった。この投稿者は「初日から先輩と上司に罵倒された」「休日に働いても残業代は出ないし、自家用車を使ってもガソリン代が支給されない」「大量の専門知識が必要だけど会社では何も教えてくれない」とも綴っていた。そこで今回は、住宅販売会社の元営業職で、現在は営業コンサルタントの菊原智明氏に、実際に住宅営業はきついのか、稼げるのかなど、リアルな事情について話を聞いた。

働き方改革もあり、労働環境は改善へ

 住宅営業とは、顧客の要望に合わせた住宅を提案して契約を結ぶのが仕事だ。顧客の家づくりや、住宅購入のサポートの役割を担う。

「ざっくりした1日の業務内容は、8時〜8時30分に出社してから、まずはミーティングで進捗の確認などを行います。訪問計画を上司に報告してから、9時頃外出。土日は住宅展示場、平日は見込み客や建設現場、予定地の訪問などを行います。その後、18時に帰社して、提案書・間取り・見積書作成などの事務作業をするという感じです」(菊原氏)

 前述のように泥臭くきついイメージがあるが、実際にはどうなのだろうか。1995年から現在まで、営業マンや営業コンサルタントといった立場で営業の世界に身を置く菊原氏は語る。

「かつては、上司が罵倒するなどのパワハラは日常茶飯事でした。現在でも古い体制が続いている厳しい環境の会社もありますが、業界全体としては労働環境は改善傾向にあります。2019年に働き方改革関連法が施行されて、残業時間も減り、休日は会社用のパソコンやスマホ、社用車は使えなくなりました。最近は少子化の影響もあり、社員の獲得が困難なため、働きやすい環境を作る流れに拍車をかけていますね。また、働き方改革施行の少し前から、退職した社員の告発などの影響で、業界全体で社員の育成に対する関心が高まっていた影響も大きいですね。

 営業担当の社員個人に目を向けると、プライベートなスマホでお客さんとやりとりを行うなどして、自主的にハードな業務をこなしている人もいます。依然としてそういう人が結果を出しやすい業界ではあるのですが」(菊原氏)

 2019年にパワハラ防止法(労働施策総合推進法)が成立し、企業へのハラスメント防止措置が求められている。まだ課題はあるものの、日本の労働環境の改善は着実に進められているといえるだろう。そういった状況のなか、住宅営業の会社も例に漏れず、労働環境の改善に取り組んでいるというわけだ。

休日出勤、夜9時にアポなし訪問は当たり前

 では、以前はどのような労働環境だったのだろうか。

「休日返上で働くのが当たり前でした。銀行の手続きやクレーム対応などもあるため、休むと仕事が回らない状況でした。現在は18時に帰社するのが一般的ですが、当時は21時まで訪問営業をしていました。21時にアポなしでインターホンを押していましたから、今考えればおかしいですよね(笑)。そのあと会社に戻るのですが、店長が事務作業をしていると終わるまで帰れない空気があり、やることがなくても帰れるのが23時〜24時頃になり、それでも次の日は8時に出社しないといけない。そんな生活を繰り返していると、次第に体力が削がれていく。

 また、住宅営業は、保険や車の営業と違って数が売れないのがきつい。半年間に1件も売れないことは珍しくありません。新築住宅を売っても、リピート購入はなく、固定客もつかないので、新規の案件を取り続けないといけない。歩合制なので売れないと給料は低いままですし、耐えられなくて辞める人も多かったですね。最長7カ月売れなかった時は、毎日辞めたいと思っていました。怒られることよりも、何をやっているかがよくわからなくなり、存在意義が脅かされる感覚のほうがしんどかった」(菊原氏)

売れないと地獄、売れると天国

 菊原氏は最初の7年間はいわゆるダメ営業マンで、後の4年間はトップ営業マンだったという。住宅営業という仕事は、きついだけでなく魅力もあるそう。

「住宅営業は売れないと地獄、売れると天国なんです。売れない時は、手のかかるようなお客さんからもがむしゃらに仕事を取る。そうすると理不尽な要求をされることも増えて、疲弊する。休日でも『今から来い!』と夜に酔っぱらったお客さんから電話がかかってきて現場に行くようなことも多々ありました。

 売れるとこの状況が、一変します。いいお客さんだけを相手するようになるので、クレームは少なくなるし、急に現場に呼ばれることもない。紹介をいただくこともあって、どんどんいいサイクルになっていく。しかも『あなたのおかげでいい家ができましたよ』と感謝されるとうれしい。自分が提案した家が形になっていくのを見るとやりがいにもなりますし、そのサイクルに入ると本当に天国のようですよ」(菊原氏)

 売れると、給与面でも天国だ。実際に年収1000万も可能だという。

「住宅営業は、基本的に歩合給です。売れない時は基本給の月給19万しかもらえないという会社もありますね。インセンティブは、指定の期間内に売れた棟数に応じて支給されることが多いです。たとえば1棟目10万、5棟目50万、10棟目で100万といった感じ。または、利益の数%がインセンティブになるところもあります。

 会社にもよりますが、年収1000万は十分狙えますし、2000万超えも珍しくないですね。稼げるところは厳しい環境の場合が多く、3カ月とか半年で辞める人が大半ですが、残った人は出世して稼ぎやすくなります」

 住宅営業は給与面では夢があるが、成功するには厳しい環境に身を置く必要がありそうだ。最後に住宅営業で成功する人に共通する人の特徴を聞いた。

「売れない営業は契約したいがために、お客さんに言わないといけないことを隠してしまうことがあります。たとえば、本当なら地盤を固定するのに100万円かかるのに、契約後に伝えてしまうなど。当然、トラブルやクレームにつながります。売れる営業は、お客さんと一生付き合うイメージで正直な営業をする傾向がありますね。そうすると、隠し事もなくスムーズに話が進み、クレームもありません」(菊原氏)

 住宅営業で稼げる人は一定数いる。夢もある世界だが、稼ぐためには覚悟と誠意をもつことが大切なようだ。

(文=福永太郎/編集者・ライター、協力=菊原智明/営業コンサルタント)

菊原智明/営業コンサルタント

菊原智明/営業コンサルタント

関東学園大学 経済学部講師、社団法人 営業人材教育協会理事。
7年間ダメ営業マン時代を過ごしたのち「営業レター【リモート営業】」をきっかけに4年連続トップ営業マンとなる。2006年にコンサルタントとして独立。現在は、経営者や営業マン向けのセミナー、研修、コンサルティング業務を行う。2023年までに約78冊の営業の本を出版。ベストセラー、海外翻訳多数。
営業サポート・コンサルティング 公式HP

Twitter:@kikuhara

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