ハウスメーカー大手のタマホームは公式サイト上で7日、SNSへの“不適切”投稿を巡って発生していたトラブルについて、投稿者と和解したと発表した。だが、一連のタマホームの対応については疑問視する声が多い。
事の発端は、タマホームの住宅展示場を訪れた方が1月27日、展示されている住宅の階段でネジが飛び出している様子を発見し、Xに写真付きで投稿したことだ。すると、当該投稿者に対し、タマホームから事実無根であるから投稿の削除をするよう要請する電話がかかってきたという。
その後、投稿の写真が事実であることが確認されたものの、投稿は削除してほしいとの電話が改めてかかってきたものの、削除を受け入れずにいると、当日夜にタマホームの社員とみられる人物が、投稿者の自宅を訪問し、あらためて削除を要請。投稿者は、タマホームの社員が勝手に自宅敷地内に入ってきたことや、投稿を削除した後も電話がかかってきたとタマホーム側の非常識さを訴える投稿をしている。
これら一連の投稿に対してタマホームは今月2日、「警察に相談し、損害賠償請求の準備を行っている」と声明を発表。すると、この訴訟を匂わす声明を受けて、件の投稿者が「本件に関して、これ以上の拡散をされることは望まない」として、穏便に済ませるために「謝罪する意思があり、これ以上の拡散を止めるためであれば協力する」との意思を示し、和解を申し出ていた。
その結果として、タマホームは「X(旧 Twitter)上における当社に対する不適切な投稿に関しまして、投稿された方と和解が成立しましたことをお知らせいたします」と、投稿者と和解したことを強調。あくまでも同社が“不適切な投稿”によって被害を受けた、との立場で和解を受け入れたかのように発表している。
だが、タマホームの対応は、“恫喝”であると指定する向きも多い。大企業が、一個人に対して訴訟をちらつかせて謝罪させる行為に、批判の声が相次いでいる。実際に、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、投稿者よりタマホーム側に非があると指摘する。
「『階段からネジが飛び出ている施工不良』が事実だとして、『SNSの削除を求めるため』を理由にアンケートの個人情報を使用して電話かけたり自宅訪問するのは、個人情報の目的外利用となり、個人情報保護法に違反するおそれがあります。そもそも、当日に自宅訪問するくらい必死なわけですから、『施工不良』も事実だったのかもしれません。
『階段からネジが飛び出ている』写真のSNS掲載は、住宅展示場という、いわばタマホームの営業の場における事実を伝えるため、これから住宅を購入する人のための情報の一つとして提供しており、『階段からネジが飛び出ている』写真にはウソがないので、名誉毀損は成立し得ません。
なお、タマホームは投稿者のユーザーアカウントを掲載していますが、アカウント自体は公開されているものなのであれば、掲載したこと自体は特に問題ではないでしょう。
いずれにせよ、今回のタマホームの対応は、かえって『階段からネジが飛び出ている』写真を広めてしまったので、『削除させる』という当初の目的と比べれば、やや失策ではないかと思います」
つまり、投稿者がSNSにタマホームの施工不良の写真を投稿したことは決して“不適切”ではなく、むしろその後のタマホーム側の対応にこそ非があるといえる。だが、訴訟を匂わせることで投稿者側に謝罪させ、自社の正当性を喧伝するかのような発表を行った。
なお、Business Journal編集部はタマホームの広報部に、一連の事実確認及び損害賠償請求訴訟を匂わせた意図などについて問い合わせたが、現在まで回答はない。回答があれば追って報じることとする。
(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)