最初のM&A(合併・買収)は12年11月、首都圏が地盤の東証2部上場のマルヤ(埼玉県春日部市)にTOB(株式公開買い付け)を実施した。買収価格は35億円。ゼンショーHDが発行済み株式の78.6%を保有して連結子会社に組み入れた。13年3月期(決算期変更)の売上高は237億円、最終損益は25億円の赤字で7期連続の赤字であり、店舗数は45店ある。そのマルヤが今回、山口本店を買収するかたちになった。ゼンショー傘下の食品スーパーの店舗数は60店舗に拡大した。
●価格競争で苦境の牛丼各社
牛丼業界は、ますます利益を出すのが難しくなってきている。吉野家ホールディングス(HD)が運営する「吉野家」が昨年4月に、牛丼並盛の定価を380円から280円へと100円値下げしたことで価格競争が激化したためだ。
ゼンショーHDの13年4~9月期の本業の儲けを示す営業利益は、前年同期比51%減の43億円、最終利益は87%減の4億円と大幅な減益決算となった。売上高はマルヤの買収で同10%増の2276億円と増収となったが、牛丼事業が振るわなかった。すき家となか卯を合計した同事業は1%減の901億円。主力のすき家の既存店の売上高は昨年10月まで26カ月連続で前年を下回った。4~9月期は客数が7%減り、売上高は8%落ちた。新規出店した分でも補えず、部門全体で減収になった。
円安に加え、中国での需要増で輸入牛肉の調達コストが高止まりし、売上高原価率が3ポイント強上昇したことや、12年に買収したマルヤの赤字も業績の足を引っ張り、減益要因となった。
そのため、14年3月期の通期見通しを下方修正した。売上高は期初見通しより195億円少ない4544億円(前年同期比9%増)、営業利益は105億円少ない83億円(同43%減)、純利益は56億円少ない5億円(同89%減)。一転して減益となる見通しだ。14年3月期(13年度通期)に150店の新規出店を計画していたが、上期の出店は55店にとどまり、通期でも110店を下回りそうだ。
値下げを仕掛けた吉野家も同じ。吉野家HDの昨年3~8月期の営業利益は同52%減の7億円と大幅減益となった。吉野家の既存店は、値下げ後の3カ月は客数、売上高とも大きく伸びたが、値下げ効果は長続きしなかった。3~8月期は客数が13%増、売り上げは7%増にとどまった。下期に入ってからは、11月は客数が9%増、売り上げは1%増と値下げの効果は薄れた。
当初、値下げ効果で客数が3割増え、売上高は2割伸びると想定していたが、「期待したほど客数は伸びなかった」(河村泰貴・吉野家HD社長)と落胆を隠せない。
松屋を運営する松屋フーズの緑川源治社長は、「並盛なら340~350円が適正価格。もう余力はない」と新規出店を抑制した理由を語る。松屋も昨年10月まで19カ月連続で既存店はマイナス成長だ。
つまり、こうした苦境の牛丼事業の落ち込みをカバーするために、ゼンショーは食品スーパー事業に力を入れているのかといえば、実はその狙いは違うところにあるようだ。