ブッキング・ドットコムを経由して空港送迎サービスを予約したところ、白タクが現れ、通常のタクシーの2倍近い料金を請求されたとの告発もある。ブッキング・ドットコムに見解を聞いた。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、訪日外国人客の入国は制限され、日本における外国人客の消費は冷え込んだ。だが、2023年5月に感染症法上の「5類」に引き下げられ制限が撤廃されると、一気にコロナ以前の水準まで観光客は戻ってきた。
1月17日に公表された2023年訪日客の旅行消費額は計5兆2923億円で過去最高を記録。同年の訪日客数は2506万人で、2019年の8割にまで回復した。10〜12月期に限れば、訪日客の旅行消費額や訪日客数は2019年を上回っている。旅行消費額は通年で初めて5兆円を突破し、インバウンドは急速に増加傾向を示している。
そんななか、旅行客の移動手段が大きな問題になっている。ドライバー不足もあって、タクシーは慢性的な供給不足に陥っている。政府はライドシェアでタクシー不足を補うことを狙い、今年4月から一部でライドシェアが解禁される。当面はタクシー事業者のみでの実施となるが、世界各国でライドシェアビジネスを展開している企業は虎視眈々と日本市場への参入を狙っている。
だが、先走ったかのように、まだ合法化されていない「白タク」営業を行って逮捕者が出ている。
逮捕されたのは、自家用車を使って訪日外国人を有料で送迎していた中国籍の男女5人。2023年12月〜2024年1月、台湾人や米国人などの訪日客を東京都内や千葉県内のホテルから羽田空港まで自家用車を使って有償で送迎した疑い。5人のうち2人は、中国のブローカーを通じて海外の配車サイトに運転手として登録しており、同サイトが提携する旅行予約大手ブッキング・ドットコムを経由して客を獲得していた。
実は、来日前にインターネットで空港送迎サービスを予約してくる外国人旅行客も多い。特に羽田空港などではタクシー待ちが大行列をつくっていることも多く、待ち時間が数時間に上ることも珍しくない。そこで、旅行慣れしている人などは、事前にタクシーを予約してから飛行機に搭乗しているのだ。
だが、大手旅行サイトを経由してタクシーの送迎サービスを予約した場合でも、「白タク」が空港に迎えに来ているケースが少なくないとして、ネット上で違法性を指摘する声が多く出ている。
なかには、ブッキング・ドットコムを経由して空港送迎サービスを予約したところ、白タクが現れ、通常のタクシーの2倍近い料金を請求されたとの告発もある。ブッキング・ドットコムのほかにも、トリップドットコム、アゴダ、クルックなどで同様の空港送迎サービスを提供しているが、白タクが配車されているケースが散見されるという。
そこで、Business Journal編集部はブッキング・ドットコムに、白タクは違法であるとの認識はあるのか、取材した。
――ネット上で、ブッキング・ドットコムが白タクを斡旋しているとの声があるが、事実でしょうか。
広報担当「事実確認していますが、弊社が白タクを斡旋しているということはありません。弊社は、世界でサービスを展開していますが、それぞれの国の法律を遵守していますし、提携先企業にも法律順守を求めています」
――では、なぜブッキング・ドットコムを経由して予約した迎車が白タクなのでしょうか。
広報担当「弊社は、サービス事業者と、サービスの利用者をつなぐ場となるプラットフォームを提供しています。その登録事業者が、違法に白タクを配車した可能性があります。必要に応じてタクシーサービスの提供者を一時停止、または除外する措置を講じています」
――白タクを配車するような事業者もブッキング・ドットコムのサービスを利用できるということであれば、御社も違法行為に加担したといわれてしまうのではないでしょうか。
広報担当「弊社のサービスに登録する事業者には、契約時に法律の遵守を求めており、違法行為が判明すれば、利用の停止や契約解除などの措置を取ります」
――日本ではまだライドシェアも白タクも認められていないので、ブッキング・ドットコムに登録できるのはタクシー事業者だけとなるはずですが、実際にはタクシー事業者以外も登録されているのでしょうか。
広報担当「現時点ではタクシー事業者だけのはずです」
――では、登録しているタクシー事業者が、規約に違反して勝手に白タクを配車しているということでしょうか。
広報担当「確認はとれていませんが、おそらくそうだと思います」
ネット上で指摘されているように、ブッキング・ドットコムが白タクを斡旋しているわけではなかったが、同サイトに登録している事業者のなかに、違法性を認識しながらも白タクを配車している企業も混ざっているとみられる。これは、ほかのプラットフォーム提供企業でも同様のようだ。
国土交通省は、違法な白タク行為について厳しく取り締まる方針。警察や空港などの施設管理者とも連携しながら、今後の対策について検討しているという。タクシーのみならず、トラックドライバーも人手不足が深刻化しており、今年4月から時間外労働時間が規制されることもあって、一層ドライバー不足に拍車がかかる。人も物も運べなくなると懸念されている「2024年問題」。政府から特効薬は示されるのか、物流業界内外問わず注目されている。
(文=Business Journal編集部)