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マクドナルド・システム障害、世界で同時発生→店舗も臨時休業の「複雑な原因」

文=Business Journal編集部、協力=山口健太/ITジャーナリスト
マクドナルド・システム障害、世界で同時発生→店舗も臨時休業の「複雑な原因」の画像1
障害発生中のマクドナルド「モバイルオーダー」の画面

 15日、マクドナルドでシステム障害が発生し、注文用のアプリや店舗レジ端末が利用できなくなり、多くの店舗が臨時休業となった。16時午前10時現在もアプリ「モバイルオーダー」「マックデリバリー」が利用できない状況が続いている。同じタイミングで海外の店舗でも一斉に障害が発生したが、米国マクドナルドは「サードパーティによる設定変更によるもの」としか発表していない。今回、世界規模の障害が発生した原因は何なのか。また、なぜシステム障害で店舗が休業に追い込まれる事態が生じたのか。専門家の見解を交え追ってみたい。

 システム障害は15日午後に発生した。店内でお客が注文するためのアプリ「モバイルオーダー」、デリバリー注文用の「マックデリバリー」、さらには店舗レジ端末も使用不可となり、クレジットカードやキャッシュレス決済アプリでの支払いができない状況に。一部店舗は手作業で現金支払いの対応を続けていた。同日夜には一部の店舗が営業を再開したものの、日が明けて16日午前10時現在もアプリ「モバイルオーダー」「マックデリバリー」が「メンテナンス中」であるとして利用できない状況が続いている。

 16時午前10時頃、東京都内の店舗でスタッフに話を聞いた。

「アプリでのオーダーはお受けできない状況ですが、店舗の対面レジ、セルフレジではカード、キャッシュレス決済アプリでのお支払いが可能となっております。混雑状況は通常の土曜日と大きく変わっておりません」

 今回注目されているのが、同じタイミングでイギリス、オーストラリア、韓国、台湾、香港、タイ、カナダ、ドイツ、ニュージーランドなど海外のマクドナルド店舗でも同様の障害が発生したという点だ。米国マクドナルド社は原因について「サイバー攻撃によるものではなく、採用しているサードパーティ製システムが実施していた変更作業によって引き起こされた」とだけ説明しているが、ITジャーナリストの山口健太氏はいう。

「マクドナルドは世界各国で共通のPOSシステムを使っているとみられますが、その詳細は公開されていません。ただ、今回の障害から、世界中の多くの店舗が共通のシステムに接続しており、夜間のバッチ処理のようなものではなくリアルタイムにつながっていることが明らかになりました。原因はサードパーティによる設定変更中に起きたとのことですが、こうした作業は突発的に起きるシステム障害とは違って事前に準備ができます。問題発生時の切り戻し手順も用意しておくのが一般的ですが、何らかのテスト漏れや想定外の事態が起きた可能性があります」

キャッシュレス対応の盲点

 マクドナルドはクラウドインフラで世界シェア1位のAmazon Web Services(AWS)のサービスを導入している。1日あたり100カ国以上の国で7000万件以上の注文における顧客の行動を分析するプラットフォームを構築し、マーケティング、広告、カスタマーエクスペリエンス向上に活用している。昨年にはアメリカでAWSの大規模な障害が発生しアプリの不具合などが発生している。また、昨年12月にはグーグルと戦略的パートナーシップ契約を締結し、今年からGoogle Cloudの生成AIを導入して業務の最適化、セルフオーダーシステムのアップデートを行うと発表。グーグルのコラボレーション機能「Vertex AI」やマネージド・データベース・ソリューション「Google Distributed Cloud」の計算資源とストレージを店舗に配備していく方針を明らかにしている。

 大手SIerのSEはいう。

「今回落っこちたアプリがAWS上で動いているのか、Google Cloud上で動いているのか、もしくはクラウドではない場所で動いているのかは分からない。ただ、世界同時で類似の障害が起きたことから推察するに、モバイルアプリはマクドナルドが世界共通で運用しているクラウド上で動いていて、そのクラウド側の設定作業か何かの過程でミスが生じた可能性も考えられる。また、マクドナルドは今後、世界中の店舗をGoogle Cloudに接続して、生成AIを導入して業務効率向上を図ると言っているので、それに向けた実証テストの過程などで不測の事態が起きたというケースも考えられる。

 マクドナルドの店舗に行けば分かるように、現在では客はスマホのアプリでオーダーしてカードやPay系で支払い処理を行うという形態が主流となっており、その前提での店舗のつくりやオペレーションになっている。すでに現金支払いは例外的な位置づけとなっており、キャッシュレス決済のシステムが落ちるとオペレーションが回らず休業にまで追い込まれるというのは、キャッシュレス対応が進んだ店舗の盲点が露呈したともいえる」

高まるITへの依存度

 15日の障害発生時、一部店舗ではスタッフがお客の注文を紙にメモして口頭で厨房にオーダー内容を伝え、現金支払いで対応していたが、なぜシステム障害で休業に追い込まれる店舗が出たのか。前出・山口氏はいう。

「システム障害によってデータの不整合が生じた場合など、根本となる原因を取り除いても復旧までに長い時間を要する場合があります。営業中の店舗では紙のメモや電卓を駆使して注文を捌いていたようですが、こうしたやり方では通常のサービスレベルを維持できないと判断した可能性があります。マクドナルドはアプリからのモバイルオーダーやデリバリー、店舗ではセルフオーダー端末やキャッシュレス決済などIT投資を進めてきました。2024年からはグーグルと提携し、クラウドや生成AIを活用してシステムを刷新していく方針ですが、ITへの依存度が高まることで障害が起きたときの対応方法がより重要になりそうです」

 前出・SEはいう。

「日が明けてもまだ障害が長引いているということは、国内のみの要因ではなく米国マクドナルド社が国をまたいで世界共通で運用するシステムで不具合が生じているという可能性が考えられる。全世界共通の基盤を運営してデータ分析・マーケティング精度向上・業務効率向上・売上向上を図るというのはメリットがある一方、システムが巨大になり過ぎて障害発生時の影響が大規模化かつ長期化するというデメリットもある。全店舗が丸一日休業するような障害が年に複数回起きれば、それだけで数十億円単位の売上損失につながり、システム投資による利益改善分が吹き飛ぶことも想定され、費用対効果の評価は難しいところだ」

(文=Business Journal編集部、協力=山口健太/ITジャーナリスト)

山口健太/ITジャーナリスト

山口健太/ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
山口健太

Twitter:@yamaguc_k

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