生活用品メーカー・アイリスオーヤマの家電製品の不具合に関する報告がSNS上で続出している。同社の家電商品といえば他メーカーと比べて安価な価格で人気を博しているが、過去にたびたび不具合・自主回収などが発表され、『すぐに壊れる』『届いた時点で不良があった』『家電はヤバい』という評判が聞かれることも少なくない。そんな同社の家電商品は他メーカーと比べて不良・故障が多いのか、そして「買っても大丈夫」なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
東大阪の下請け企業として1958年に創業した同社(創業当時は「大山ブロー工業所」)は、1980年代に園芸用品に進出し、ガーデニングブームも追い風となり成長。その後、収納用品や家電製品などに進出し業態を拡張させ、2010年代に入るとLEDシーリングライトやクッキングヒーター、IHジャー炊飯器といった家電商品を相次いで投入。現在では日用品や家具に加え、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった大型家電まで幅広く扱う総合生活用品メーカーとなっている。
国内のほか、米国や韓国、中国、オランダ、フランスなど海外にも工場を持ち、年間グループ売上高7540億円(2023年度)、従業員数6000名を超える日本を代表する大企業だ。
そんな同社の家電商品では、過去にはたびたび品質問題が起きていた。
・09年
ラミネーターにて内部ヒーターの接触不具合により発火事故が発生し自主回収。
・18年
LED照明で発煙事故が発生し自主回収。
・18年
同社が輸入した電気ストーブ(セラミックファンヒーター)から出火し、火災が発生。無償で点検・修理・交換を実施。
・21年
インバーター発電機において部品の不具合により燃料が漏れる恐れがあることが判明し、自主回収。
・22年
「たこ焼き2WAYプレートITY-20WA-R」においてプレート形状に不具合があり、製品本体に正しく固定できない事象が発生。対象プレートを無償交換。
・22年
LEDシーリングライトの回路部分が黒く焦げ付く事象が発生。
このほか、22年には「Bluetoothスピーカー搭載LEDシーリングライト」にて「隣の家などから勝手に接続され音楽を流される」との不具合が報告され、同社は謝罪するに至っている。
そして、ここ最近でもSNS上には以下のような内容の報告が相次いでいる。
・冷凍庫を購入したところ天板が歪んでおり、扉が開いている旨のエラー通知が出て使用できない。アイリスオーヤマに問い合わせても交換してもらえず、販売店が交換対応してくれたものの、新たに届いた冷凍庫から常に大きな音がする。
・ファンヒーターにて持ち上げるために指を入れる部分がツルツルと滑り、重心も偏っているので滑り落ちる。
・LED照明でフリッカー(ちらつき)の発生が著しい
・エアコンが半年で壊れた
商品企画のプロセスが他メーカーと逆
アイリスオーヤマの家電をめぐっては「安いけど性能はいまいち」というイメージが広まっている背景について、家電ジャーナリストの安蔵靖志氏はいう。
「一般的にメーカーが商品開発や価格設定を行う際には、搭載する機能や部材からコストを積み上げて『じゃあ、これくらいの価格で売ろう』『これくらいの価格なら、これくらいの質感がないとダメだよね』といったプロセスをたどります。一方、アイリスオーヤマは発想が逆で、まずターゲットとする価格を先に決めて、そのあとに機能や使用する部材などを決めていきます。結果的に、どうしてもデザインや質感が軽視されがちで、消費者から『安っぽい』と感じられてしまう面はあるかもしれませんが、『安かろう悪かろう』というわけではなく、機能や性能に見合った価格設定にはなっていると感じます」
実際のところ、アイリスオーヤマの家電は他メーカーと比較して品質的に問題があるケースが多いといえるのか。
「今回の冷蔵庫に関する報告がもし事実であるとすれば、同社の検品・品質管理面で問題があったということになりますが、このような出荷時の不良や不具合の発覚による自主回収というのは、どの大手メーカーでも起きていることです。特段にアイリスオーヤマの家電に問題が多いということはないと思います。私自身も自宅で同社製の洗濯機やエアコンなどを使用していますが、特に問題はありません。ただ、たとえば空気清浄機など、同社の製品のなかには実際に現物を見ると『ちょっと安っぽく感じる』というものもあり、そういうモノをリビングに置きたくないという人はいるかもしれません。ですので、くつろぐ空間やよく目に入る場所などに置く家電であれば、店舗で実物を目で確かめてから購入したほうが無難でしょう」(安蔵氏)
ちなみに安蔵氏は、性能的にも一定のレベルをクリアしている商品を割安な価格で手に入れるためのアドバイスとして、次のようにいう。
「たとえば薄型テレビでは中国のハイセンスやTCLの商品が日本でも伸びていますが、日本メーカーのテレビも大半は中国の工場でつくられていることもあり、中国の製造現場にはノウハウが蓄積されているので、性能的にはハイセンスやTCLの商品でも申し分はないでしょう。これらメーカーの商品が安いのは圧倒的なバイイングパワーや大量生産などが効いているといった要因によるものなので、『中国製だから安かろう悪かろう』と決めつけず、選択肢の一つとして検討してみるのもよいでしょう。もちろん、返品対応や保証期間、サポート体制がしっかりしているのかどうかは、事前に確認することが大切です」(安蔵氏)
(文=Business Journal編集部、協力=安蔵靖志/家電ジャーナリスト)