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山崎製パン、揺らぐ信頼…10年で4件の死亡事故、「中抜き」など不正行為も

文=Business Journal編集部
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山崎製パンの公式サイトより

 2月、千葉工場(千葉市美浜区新港)で女性アルバイト従業員(61)がベルトコンベヤーに胸部を挟まれ死亡するという事故が起きた山崎製パン。同社の工場では過去10年間に4件もの死亡事故が起きているが、18日発売の「週刊新潮」(新潮社)は、同社が一部店舗に対し本来の納品数・代金分の個数より少ない数量を納品する「中抜き」や、ノルマ達成のために店舗から注文を受けていない商品を無断で納品するといった不正行為が行われていると報じている。毎年のように異物混入などによる自主回収も起きているが、なぜ同社では消費者からの信頼が損なわれかねない事態が相次いでいるのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 製パン業界最大手の山崎製パンは、「ダブルソフト」「薄皮シリーズ」「ランチパック」「ナイススティック」「ホワイトデニッシュショコラ」「ミニスナックゴールド」など長寿シリーズを多数抱え、年間売上高は1兆円を超える。手掛ける商品は食パン、菓子パン、サンドイッチなどのパン類に加え、菓子類、飲料類など幅広い。このほか、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」やベーカリーショップの運営なども行っている。毎年春に展開されるキャンペーン「春のパンまつり」も有名で、多くの一般消費者にとって親しみが深い企業の一社といえる。

 そんな同社の千葉工場で起きた死亡事故。2月28日付「集英社オンライン」記事によれば、事故にあったのは同工場に20年近く勤務する和菓子の作業ライン担当のベテラン従業員だったという。11日発売の「週刊新潮」記事によれば、女性従業員はベルトコンベヤーのバーに腕を挟まれて奥に引き込まれたが、通常ベルトコンベヤーに設置されている安全カバーが付いていなかったという。また、記事内で同社元社員は、知り合いの社員だけで10人は作業中に指を切断する事故に遭っていると証言している。

 同社の工場で死亡事故が発生するのは今回が初めてではない。

・2012年6月16日
 伊勢崎工場(群馬県)で男性社員が配送用トラックのドアに挟まれ、胸などを強く圧迫されて死亡。ケースを降ろす作業中に車が前に動き出し、運転席側のドアを開けて車を止めようとした際、ドアが駐車中の別の配送車にぶつかり、はずみで挟まれたとみられる(「MSN産経ニュース」記事より)。

・15年11月2日
 古河工場(茨城県)で男性社員が小麦の貯蔵タンクを清掃中、タンクからコンクリート製の地面に転落し、頭を強く打って死亡(「茨城新聞」記事より)。

・20年
 神戸工場(兵庫県)で、容器の洗浄ラインで機械の運転を停止させずに調整作業が行われ、機械内で修復作業に当たっていた男性社員が容器と機械の内壁の間に頭や上半身を挟まれ死亡(「労災ユニオン」公式サイトより)。

 過去10数年で4人の死亡事故というのは、食品メーカーとしては多いと考えられるのか。食品メーカー関係者はいう。

「比較できる資料を持ち合わせていないので、感覚的な回答となってしまいますが、工場の数が多いことや、大型の機械装置が多いことが考えられますが、10年で4件は多いように感じます。労働安全衛生法第78条、79条に基づき、労働局から『特別安全指導事業場』いわゆる『特安』に指定されている可能性も考えられます。立ち入り検査などが実施されており、監視対象となっていると思われます」

再発防止対策に力を入れるべき

 食品製造現場における事故は少なくない。農林水産省の調査によれば、2019年の1年間に食料品製造業の「新たな製品の製造加工を行う事業所」「工場、作業所」で発生した作業事故は7969件、そのうち死亡事故は16件、重篤事故は3672件となっている。なぜ山崎製パンで死亡事故が繰り返されているのか、原因は何であると考えられるのか。

「同社の事故検証と再発防止対策、従業員への安全教育がどのようになっているのかが分かりませんので、あくまで一般論としての話ですが、食品メーカーでは事故情報はヒヤリハット事例も含めグループ企業に開示し、従業員の安全管理のために活用しています。担当者任せにするのではなく、事業場単位で安全教育活動報告を提出しています。同様の事故は時と場所を変えて必ず起きるものである、という認識を従業員全員に意識付けする必要があります。これは容易なことではありません。地道かつ愚直に事故事例を共有し、原因分析と対策分析、危険予知と水平展開を繰り返すしかないと思います」(同)

 山崎製パンは死亡事故の発生の事実や原因などを自社のリリースとしては発表していないが、食品メーカーとしてはこのようなケースでは自発的な公表は行わないものなのか。もしくは、公表すべきと考えられるのか。

「公表する義務はないと思いますが、企業の考え方によりまちまちです。あくまで私見ですが、公表することよりも再発防止対策に力を入れるべきであると考えます。機械設備面の改善といったハード面の対策であったり、従業員の行動や5Sの定着であったりというソフト面の対策が必要であると考えます。同社の広報が事故を公表しないという姿勢かどうかはわかりませんが、再発防止に力を入れたいと考えていると思います。

 いずれにせよ、安全衛生に関しては完璧というものはありません。また、従業員の意識の差は確実に存在します。ネットやマスコミ報道では山崎製パンに対する厳しい批判も目にします。アルバイトや外国人労働者を含めた従業員、事業所の数が増え、機械装置が大きくなれば、安全管理の徹底は想像以上に難しくなるでしょう」

 2月の千葉工場で起きた事故は、安全対策面での不備などが原因だったのか。山崎製パンはBusiness Journalの取材に対し以下の回答を寄せた。

「このたびの事故により、お亡くなりになられた従業員のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。 当社としましては、本年2月に千葉工場で死亡事故が発生してしまい、大変責任を感じております。事故原因などの詳細につきましては、労働基準監督署の調査が終了していませんので、外部にお答えすることは差し控えさせていただいておりますが、当社では、直ちに原因究明を行い、全国の各工場において同様の危険箇所がないか全て点検し、再発防止に取り組んでおります。 また、過去に発生した事故につきましても、速やかに再発防止対策を講じてまいりました。当社としましては、引き続き、全社を挙げて労働安全衛生管理の精度向上に取り組んでまいります」

社員による不正行為も

 山崎製パンでは社員による不正行為も起きているという。18日発売の「週刊新潮」によれば、前述した行為のほかに、商品で問題が発覚すると、その商品を回収するために社員が納品された店舗を回って一般客を装って購入することもあるという。

「同社には約2万人もの従業員がおり、悪知恵を働かせて不適切な行為に走る人が出てくるのは仕方がない面もある。ポイントは不正行為が組織的に行われているのかどうかという点。問題のある商品を回収するのであれば、本来ならすぐに店舗に連絡して商品を棚から引き上げさせるというのが常識的な方法であり、それをせずに社員が一般客を装って買い占めるというのは隠蔽の意図がうかがえる。本社からの指示ではないにしても、部署単位や営業所単位でやっていれば、ある程度組織的に行われているということになる」

(文=Business Journal編集部)

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