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山崎製パン工場でコンベヤーに挟まれ死亡事故…危険かつ過酷な食品工場の実態

文=Business Journal編集部
山崎製パン工場でコンベヤーに挟まれ死亡事故…危険かつ過酷な食品工場の実態の画像1
山崎製パンの公式サイトより

 山崎製パンの千葉工場(千葉市美浜区新港)で24日、女性アルバイト従業員(61)がベルトコンベヤーに胸部を挟まれ死亡するという事故が起きた。食品工場の労働環境の危険性はどれくらいなのか。また、安全管理を徹底しているはずの大手製パン会社で、なぜこのような重大事故が起きたのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 製パン業界で圧倒的1位の山崎製パン。「ダブルソフト」「薄皮シリーズ」「ランチパック」「ナイススティック」「ホワイトデニッシュショコラ」「ミニスナックゴールド」など長寿シリーズを多数抱え、年間売上高は1兆円を超える。手掛ける商品は食パン、菓子パン、サンドイッチなどのパン類に加え、菓子類、飲料類など幅広い。このほか、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」やベーカリーショップの運営なども行っている。

 業界を代表する大手だけに、食品の安全・衛生管理には注力している。「食品安全衛生管理本部」を設置し、本社・工場で計約450名の専門スタッフを配置。以下の3つからなり、全工場に部門直轄の組織を設けている(以下、同社公式サイトより引用)。

・食品衛生管理センター
 安全・安心な製品をお客様にお届けするための原材料や製品の細菌検査、理化学検査、保存検査などの各種検査や製品表示の確認、工場内の衛生指導、従業員教育を行っています。

・食品品質管理部
 異物混入防止を中心とした食品安全対策に取り組んでおり、科学的な基準に基づいた製造設備の清掃及び点検・改善の実施と、現場清掃の支援・指導を行っています。

・お客様相談室
 お客様からのお問い合わせへの対応やお寄せいただいたご意見、ご要望を製品開発や製造現場へ届ける役割を担っています。

 また、安全な食品を製造するためにとらなければならない行為のガイドラインであるGMP(適正製造規範)を重視した食品安全管理システムとして「AIBフードセーフティ指導・監査システム」を導入。同社は公式サイト上で

「原材料の受入、移動、保管、輸送、加工や最終製品を配送する工程において、従業員、生産工程や環境が食品安全上の問題を引き起こさないことに、施設は自信を持つ必要があります」

と記述している。

 食品メーカー関係者はいう。

「消費者は100円出せば美味しくて安全なパンを食べられるが、1個100円のパンといえども、メーカーは高額な機械や設備を導入し、加えて『絶対安全』といえるよう安全管理を徹底するためにさまざまな取り組みを行い、専門部署を設置して多くの社員を置いている。このようにメーカーが多額のコストをかけても、安価で販売でき、かつ利益を出せているのは、規模の経済の効果を最大限に利かせているため。24時間稼働の工場も少なくなく、時間単位の生産量を極限まで増やすために生産ラインの流れはかなりの高速となっている」

夜勤は時給1500円

 そんな効率を追求する食品工場の労働条件はどうなっているのか。例えば、ある求人サイトに掲載されていた山崎製パンのアルバイトの求人内容は以下のとおり。

<●お仕事内容
・パン、ケーキ、和洋菓子等の流れ作業
・トッピングをのせる
・商品をパックに詰める
・流れてきた商品に問題が無いかチェックする
●勤務時間
・9:00~18:00(実働8時間)、18:00~5:00(実働10時間)
●給与
【昼勤】時給1150円~
【夜勤】時給1200円~時給1500円 ※夜勤は深夜・残業手当あり>

 前出・食品メーカー関係者はいう。

「給与などの待遇面で山崎製パンの工場作業員のそれは悪くはない。食品工場は大きく2つに分けられ、大手メーカーが自社で運営する工場と、小売り企業などから委託を受けて製造する工場。前者は比較的待遇が良いとされるが、後者のたとえばコンビニチェーンから委託を受けて弁当や総菜を製造する工場などだと、半数以上の作業員が外国人であったり、環境が劣悪だったりする。このほか、中小メーカーの関連会社が運営する工場も後者に近くなるケースがみられる」

 山崎製パンの工場アルバイトといえば、以前からSNS上では次のような声もみられ、一部で「キツイ」という評判も流れていた。

<同じ作業をずっとこなすのがきつかった>

<流れてくるショートケーキのいちごをのせる作業が1時間ぐらい続いてつらかった>

<匂いが甘かったり、蒸しあがった湯気の匂いだったりで、気分が悪くなる方もおられます>

<既存のスタッフの高圧的な態度、業務の説明をしないなど仕事以外でストレスが溜まる>

 当サイトは2023年11月9日付記事掲載に伴い山崎製パンに取材を申し込んだが、回答は得られておらず、真偽は定かではない。

「一般的に食品工場での作業アルバイトは『人を選ぶ仕事』。基本的に工場内は私語厳禁で、ラインの稼働中はずっと立ちっぱなし。いったん製造ラインに配置されると同じ場所から動けなくなるだけではなく、仕事も単純作業の繰り返しなので、すぐに飽きてしまい、達成感を抱きにくい。また長時間下を向いて作業することになるので、首や肩が痛みやすくなるんです。

 そして、製造ラインはスピードが速く、流れてきた商品をとにかく迅速にさばかないといけません。何せ相手は機械ですので、人のペースに合わせることなく続々と商品が運ばれてきます。単純作業ではあるものの、慣れるまでには大変ですので、気を抜いていると見落としが出てしまいます。普通のラインでも苦労すると聞きますが、人気商品のラインだとさらにスピードを求められるそうです」(人事コンサルタントで「働き方改革総合研究所」代表取締役の新田龍氏/23年11月9日付当サイト記事より)

年間の重篤事故は3000件以上

 農林水産省の調査によれば、2019年の1年間に食料品製造業の「新たな製品の製造加工を行う事業所」「工場、作業所」で発生した作業事故は7969件、そのうち死亡事故は16件、重篤事故は3672件。食品工場での事故頻度は低くはない。

「大きなカッターなどの刃物や高温の設備・器具、ベルトコンベヤーなどがあちこちで稼働する食品工場はかなり危険な環境といえる。事故発生を防ぐためにさまざまな対策が施されてはいるものの、コンベヤーや機器の緊急停止ボタンがどこにあるのかを全作業員が認識しているわけではない。製造ラインの流れるスピードはかなり速く、作業員は一瞬も気を抜けない一方、単純作業が延々と続くので集中力が途切れてしまいがち。加えて作業員のスキル習熟度はバラバラなので、結果として一定の確率で事故が起こるのは不可避だ。安全管理を徹底しているはずの大手の山崎製パンですら今回のような事故が起きるという事実が、食品工場の危険さを表している」(前出・食品メーカー関係者)

BusinessJournal編集部

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